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【日本ハム ドラフト1位】道産子“大卒”で史上初のドラ1 「タコ漁師の息子」苫小牧駒澤大・伊藤大海の“さみしさ”
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
posted2020/10/26 17:45
ドラフトの有力候補、苫小牧駒澤大・伊藤大海投手(4年・右投左打)
いつも1人「さみしそうだった」伊藤大海
第2戦を、大滝監督が「大海の後継者」だと期待をかける後藤晟投手(2年・178cm80kg・右投右打・松本国際高)が、延長10回を完封して踏みとどまり、優勝を決する第3戦、4回途中からリリーフした伊藤大海がその後の5回3分の2を無失点に抑えて、苫小牧駒大を「秋」の初優勝に導いてみせた。
11月の「明治神宮大会」への出場権を争う代表決定戦は、10月12日から行われる。そこで、「札幌六大学リーグ」の優勝校を破って初めて、「全国」の舞台に進めることになる。
取材の日、グラウンドで練習に励む伊藤大海は、どこかさみしそうに見えた。親しく言葉を交わす相手もなく、いつも1人で走り、投げ、トレーニングに取り組んでいた。
「いいボールです! うなってますよ!」
ブルペンで受けていた同じ「4年生」の捕手も、こんな感じだった。駒大苫小牧高では1年後輩だったのだから、当然といえば当然だ。
これだ!と思った。これが、投手・伊藤大海の「伸びしろ」だ。自分より年長の選手たちと野球がやりたいんじゃないのか。自分よりもっとすごい選手たちの中で、そういう彼らからの痛烈な刺激の中で、もっと自分で自分を追い詰めてみたいんじゃないのか。
飛び抜けたセンスを持った者は、より高い次元に放り込んだ時ほど、より激しく輝きを増す。
長い人生で長いこと野球と接してきて、私がたどり着いた「経験則」の1つだ。
大卒「道産子」 ドラ1は“史上初”か
生まれも育ちも北海道……正真正銘の「道産子選手」がドラフト1位で指名されたのは、高校生なら、2007年の楽天1巡目・寺田龍平投手(札幌南高)がいる。しかし、「大学生」で生まれも育ちも、所属する学校も、正真正銘の道産子選手がドラフト1位されるのは、彼がおそらく初めてのことになるだろう。
函館の北、大沼公園に近い鹿部町で生まれ、たこつぼ漁師さんの息子として育った伊藤大海。
板っこ一枚下は地獄……の漁師の世界。
小さな船に揺られながら、腕一本、度胸ひとつで海と向き合ってきたお父さんの生きざまを、さんざん目のあたりにして育ってきたはずだ。
「腕一本」で生きていく覚悟が、できていないわけがない。