「素直に応援できなかった」父の騎乗

――今年のオークスはウインマリリンに騎乗予定だった武史騎手が騎乗停止となり、代わりに典弘騎手が手綱を取りました。

武史　複雑でしたね。やはり自分が乗りたい気持ちが強かったので、素直に応援できないというか……。レースを見ていて、道中の運びは理想的でした。僕もできるならああいう競馬をしたいと思っていました。

典弘　武史からの指示通りに乗りました（笑）。

武史　直線も本当に理想的な形で抜け出してきて「うわっ」て思いましたね。もちろん「さすが」とも思いましたが、本当は自分がそういう騎乗をしたかったので……。

典弘　でもウインマリリンは本当にいい馬だよ。オークスの時は「まだまだ」と思ったけど、それであれだけの競馬をして2着。これからが楽しみだと思うな。

――息子たちが騎手になって典弘騎手が受けた影響はありますか？

典弘　やっぱり人としてまともになったよ。それまでは自由勝手に“横山典弘”をやらせてもらっていたけど、いい意味で重しがついた。馬鹿はできないというか、色んな意味でこいつらの足も引っ張りたくないし。まぁでもそれも本当にここ何年かだね。最初はやっぱり自分が変化できないの。自分が作った“横山典弘”という像から戻れないというか……。それこそうれしいことがあっても、素直に喜べなかったりね。でも今は前より生きやすくなったし、楽になったよ。例えば和生が重賞を勝って、どう思いますかと聞かれたら、素直に喜べる。父として息子が勝ったことがうれしいってね。

自分を必要とする声があるうちは

――それでは最後に典弘騎手の今後について聞かせてください。いつまで現役を続けるとか、プランはあるのですか？

典弘　そんなの知らないよ。10年後もやってたって驚かないし。20年後はさすがにないかもしれないけど……。

和生　いやぁ乗ってるかもしれないな（笑）。

典弘　う～ん……。でも的場（文男）さんが乗ってるのを見たり、オヤジが（調教助手として）定年まで馬に乗っていたことを考えたら、乗ってる可能性もあるか（笑）。

武史　20年後だと孫ができて騎手になっているかも（笑）。

和生　3代で現役の騎手？　いや～さすがに無理か（笑）。

典弘　まぁそこを目指すってことはないかな。あくまで自然体で。今まで通りにやって、そして自分を必要とする声があるうちは乗り役を続けていきたいと思うけどね。