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決勝ソロを浴びたけど……藪恵壹が力説「藤浪晋太郎のリリーフ登板に大賛成」の理由
text by
藪恵壹Keiichi Yabu
photograph byKyodo News
posted2020/10/01 15:05
セットアッパーとして躍動する藤浪晋太郎。29日の中日戦では今季最速の159kmで打者を圧倒し、プロ初ホールドを記録した
特に先発のリリーフ転向については、阪神には実績がありますからね。新型コロナでの離脱前に勝ちパターンを支えていた岩崎優もそうですし、最近だと岩貞祐太も中継ぎでの登板機会が増え、目に見えて投球が良くなってきました。藤浪自身にも「自分も」という気持ちがあったのではないでしょうか。
もちろんあれだけの投手ですから、リリーフは一時的な措置として先発復帰を目指すべきです。ただ、失ってしまった自信を取り戻すには小さな成功体験を積み上げていくしかありません。中継ぎでも、1イニングずつ9試合に登板すれば1試合分。ロングリリーフなら3回で1点まで、というくらいの気持ちで、しばらくは気負いすぎずにやればいいと思います。
先発として名を馳せた投手にも“リリーフ経験”はある
それに、リリーフ経験は先発投手としてやっていく上でも確実にプラスになりますよ。私自身、阪神にいたときは先発登板が245試合、中継ぎとしての登板が23試合と比重が大きく偏っていました。MLBに移籍するときはリリーフ経験を積みたいという気持ちもあり、結局100試合すべて中継ぎで投げたのですが、やって良かったなと思います。
先発として投げているとどうしても完投だったり、いかに長いイニングを投げるかということばかりに囚われてしまいがちですが、中継ぎになるとワンポイントで起用されることもあります。普段とは違う目標が設定されることで、投手の評価基準は自分が思っている以外にも色々あるんだと実感できて、視野が広がるんです。斎藤雅樹さんや現広島監督の佐々岡真司さんら、先発として名を馳せた投手でもリリーフ経験のある選手は多いですし、両方やっておくことは後々に生きてくるはずです。
今後しばらくはリリーフ・藤浪の登板機会があると思いますが、見てほしいのは結果よりもどう抑えたか。勝っていても負けていても、なるべくイニングを長く、なるべく球数を少なくということが実現できれば首脳陣からの信頼も増しますし、自分自身への自信、ひいては完全復活につながると思います。
もちろんチームとしても彼一人に頼るわけにはいきません。優勝はさすがにかなり厳しくなってしまいましたが、球団全体でもう一度気を引き締めて、目の前の試合に全力を尽くしてほしいですね。