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富士24時間レースで優勝 トヨタ社長・豊田章男がレース前に語った「クルマを壊せ」の真意とは?
text by
山本シンヤShinya Yamamoto
photograph byNoriaki Mitsuhashi/N-RAK PHOTO AGENCY
posted2020/09/19 20:00
富士24時間レースのST-2クラス、GRヤリスの一員として優勝を飾った“モリゾウ”こと豊田章男社長(中央)
「抜く」も「抜かれる」も安全にやる方法がある
――ところで、社長は以前から「レースに参戦しているが、レースはしていない」とおっしゃっていました。
「それは、今も昔も変わらずそうです」
――ただ、外から見ていると今はレースをしているように見えます。
「抜いている……というのがあるからではないでしょうか」
――実際にタイムにも現れているような気がしています。
「私に言わせれば、『抜く』も『抜かれる』も安全にやる方法がある。確かに速くはなっているかもしれませんが、基本的にはマイペースなんですよ。レース中に相手のペースに巻き込まれてムリして頑張る……ということはありません。そうなった場合は必ず譲るか、少し待ちます。技術的な面で言うと、単独走行でも、相手を抜こうが、相手に抜かれようが……といった走行でも、1周のタイムのばらつきはなくなりました」
プロレーサーに匹敵するタイム
――今回の富士24時間レースでは、路面状況が悪い時でもプロレーサーに匹敵するタイムを出しています。ただ、そのタイムを聞くと一番驚くのは社長だと聞きました。ご自身ではそれほど速いタイムで走っていると思わなかったのでしょうか。
「私の運転の師匠である成瀬さん(成瀬弘:トヨタのマスターテストドライバーで2010年に開発テスト中の事故で亡くなった)から、ずっと『タイムを追うな!!』と言われてきたんですよ。決してタイムを追ってはいけないというものの、本音を言えば運転している時にタイムを教えてほしい。無線で『いいペースで走っていますよ』くらい、言ってくれたっていいじゃないですか(笑)。終わった後に良いタイムと言われてもね……。レース中は『あのカーブの課題は?』などと、毎周思い出しながら集中するようにしています」