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皇治は嫌われ者なのに人気者? 圧倒的不利な那須川天心との闘いに挑む男の大阪愛
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byMotoo Naka/AFLO
posted2020/09/14 19:30
9月27日、那須川天心と闘うことが決まった皇治(右)。嫌われ者なのに人気者のこの男は神童にも怯まない。
那須川天心の戦慄するほどの強さ
選手からの風当たりは強いが、皇治には追い風が吹いているのかもしれない。といっても、戦前の予想では皇治は圧倒的に不利と出ている。仮に100人の識者が勝敗予想をするならば、99人は那須川を支持するのではないか。仕方あるまい。那須川はいまだ無敗の快進撃を続け、世界と最も勝負しているファイターといえる存在なのだから。
しかも、キックボクサーとしては明らかに第1期のピークを迎えつつある。今年7月無観客試合として行われたシュートボクシングの笠原友希との一戦では、見ている者に戦慄を覚えさせるほどの殺気を伴った切れのいい動きを見せていた。
もっとも、皇治は那須川の存在が大きければ大きいほど歓迎する。登山家が高ければ高いほどその山に登りたいという思うのと同じ理屈だ。いみじくも、8月26日の対戦カード発表会見で皇治はアンチからの声を制するかのようにこんな言葉を発している。
「負け戦をしにいくわけじゃない。全身全霊懸けて奪うつもり。不可能やと言う奴はほざいとけって感じです。根性でいきますよ」
「無名の強いやつとか興味がない」
そもそも皇治には「盛り上がるカードだったら何でもする」という発想が根底にある。「だからこそK-1時代には武尊とやったりしたわけですから。試合が面白くなくて、無名の強いやつとか全く興味がない」
その証拠に8月の横浜大会出場も打診されたが、RIZIN側が提示した対戦相手では気持ちが動くことはなかった。
「自分を安売りするわけにはいかない。ファンをガッカリさせたらいけない」
皇治は一度発言したことは必ず実現させることで、少しずつファンの支持を増やしていった。まだ関西の無名のキックボクサーという存在に過ぎない頃から、当時K-1でトップを走っていた「卜部弘崇を倒す」と言い続け、時には押し売りに近い形で自分を売り込み最終的にはその卜部から勝利を奪うという離れ業を演じてみせた。
いったい何が皇治の力の源になっているのか。昔から地元関西で皇治の試合を見続けているある関係者は、「ひじょうに地元池田市や大阪への愛が強い」と言う。