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「みんな過剰に期待しすぎなんですよ」澤村拓一に聞かせたい上原浩治の金言。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/09/07 20:00
2016年当時、「チームに迷惑をかけて申し訳ない」とたびたびコメントしていた澤村。
澤村が抑えに失敗し、広島が優勝へのレールに乗った日。
8月7日。首位広島との3連戦で2勝しゲーム差を4.5まで縮めた第3戦の9回2死走者なしから、澤村は菊池涼介内野手に同点ソロを浴びた。巨人はこの一発で追いつかれ逆転サヨナラ負けを喫して、勝てば3.5ゲーム差と詰め寄ったところを、逆に5.5ゲーム差と突き放された。実質的にはここで広島の25年ぶりの優勝へのレールは敷かれたことになる。
澤村は8月23日からの広島3連戦でも3戦目に1点リードの9回2死から追いつかれて逆転負けを喫している。
ただ、だからと言って澤村が責められるべきかと言えば、そうとは思えないのだ。
トップのセーブ数を誇る澤村に、観客の反応は……。
今季の東京ドームで澤村がコールされると、歓声とともに何とも言えないどよめきが巻き起こることがある。
8月31日時点で澤村は全てリリーフで52試合に登板して4勝3敗、リーグトップの34セーブという成績を残している。そのうちリリーフの失敗は前述の広島戦を含めて7回あり、この数字をどう見るかだが、決して悪いものではないはずだ。
パ・リーグ最多となる38セーブを挙げているソフトバンクのデニス・サファテ投手も56試合にリリーフ登板して失敗は8度とほぼ同じ数字である。
ただ、2人の投手で大きな違いは、抑えたときの内容にある。
澤村がリリーフでマウンドに上がり、走者を1人も出さない完全救援をしたのは18回だった。それに比べるとサファテは全登板の半分にあたる28回は走者を1人も出さずに試合を完了させている。要は澤村はリリーフに成功した45試合のうちでも、27試合は走者を許し、走者を背負ってファンをヤキモキさせてきたということなのだ。
もともとボールの勢いで相手を制圧するピッチングスタイルで、そこに目をつけた原辰徳前監督がクローザーに抜擢した経緯がある。このタイプの抑え投手には過去にも阪神で守護神を務めた当時の藤川球児投手や横浜(現DeNA)と巨人で活躍したマーク・クルーン投手らがいる。
彼らも登板して走者を出すたびに「安定感がない」と批判を浴び、藤川は日本代表に選ばれても決してクローザーを任されることはなかった。
ただ、である。
彼らが守護神として失格だったかといえば、そうではないのは結果が証明しているのだ。