球体とリズムBACK NUMBER
J1川崎、ルーキー三笘薫も輝くが、リバプール並みの独走を支えるのは“あの男”。
posted2020/09/08 20:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
デジャブのような独走が続いている──。
今季のJ1でダントツの首位に立つ川崎フロンターレが、昨季覇者横浜F・マリノスの本拠地で3-1の快勝を飾った。これで川崎は15試合を終えて、12勝2分け1敗の勝ち点38。その内容は44得点、13失点、31得失点差と、現在の順位表ではひときわ群を抜く数字が並ぶ。後続のセレッソ大阪(消化試合はひとつ少ない)には、8ポイント差をつけている。
この状況は、およそ9カ月前のイングランド・プレミアリーグと似ている。第15節を終えた時点で、首位リバプールは14勝1分けの勝ち点43で2位レスター・シティに8ポイント差。ただし得点(37)と失点(14)の数は、川崎が優れている。スタンダードは異なるとはいえ、同じ島国のトップリーグだ。川崎もこのまま、昨季プレミアリーグのリバプールのように首位をひた走り続けるだろうか。
三笘薫の姿が美しかった。
その可能性は高いと思う。5-0の大勝を収めた前節の清水エスパルス戦後には、相手選手が「ボールを受けることさえ怖がるようになった」と明かしたほど、敵を圧倒。だが今回の相手は、王者の矜持を備えるマリノスだった。首位チームにも萎縮するはずのないディフェンディングチャンピオンから、見事な逆転勝利を奪ってみせたのだから、今の川崎の強さがあらためて証明されたと言える。
勝ち方にも深みがあった。開始早々に横浜に先制を許した時は、逆にその精神面の影響は川崎に表れたのかとも思えた。なにしろマリノスには昨季のホーム最終戦で1-4の完敗を喫し、そのまま優勝を遂げられている。嫌なイメージがあったとしても、不思議ではない。
だが川崎は失点にも沈むことなく、徐々にペースを取り戻していく。誰かがボールを持てば、周囲のチームメイトはすかさずトライアングルをつくり、強くて正確なパスをテンポよくつないでいく。そんな得意のパスワークで、ハイラインを敷いてコンパクトにプレスをかけてくる横浜をいなしては、左の高い位置に張る三笘薫へ大きく展開する。これが狙いのひとつだった。
この23歳の新人ウイングは、良い意味で色気を感じさせるドリブラーだ。序盤から横浜の高い最終ラインの裏を突き、チアゴ・マルチンスのスピーディーな対応に手を焼いていたが、33分には同じように素早くカバーに戻ってきたチアゴを出し抜き、カットインからそのCBの股間を抜くシュートを決めた。ボールを運ぶ際の姿勢も、シュートを放つ後ろ姿も美しかった。