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J1川崎、ルーキー三笘薫も輝くが、リバプール並みの独走を支えるのは“あの男”。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byGetty Images

posted2020/09/08 20:00

J1川崎、ルーキー三笘薫も輝くが、リバプール並みの独走を支えるのは“あの男”。<Number Web> photograph by Getty Images

独走を続けるフロンターレで輝きを見せるルーキー、三笘薫。シュートを放つ美しい後ろ姿にますます期待がかかる。

抱き合った三笘、旗手のルーキーペア。

 昨季終盤の対戦時とは異なる種類の緊張感が漂う一戦は、そのままハーフタイムへ突入。そこで鬼木達監督が切った2枚のカードにより、後半開始直後に均衡が破られた。

 今季の川崎は中盤の形を正三角形から逆三角形に変え、それこそリバプールと似たシステムを組んでいる。いやフォーメーションばかりか、ユルゲン・クロップ監督のチームのように、高い位置から相手に激しく圧をかけることにもトライしている。このハイプレスを前半よりも機能させるべく、前線中央をレアンドロ・ダミアンから小林悠へ、右ウイングを家長昭博から旗手怜央へ変更し、家長を中盤に落とす。その効果はてきめんだった。

 再開直後から敵陣で猛然と球を刈り始め、横浜のリズムを完全に崩すと、48分には左サイドを抜け出した大島僚太の綺麗な曲線のグラウンダーのクロスを、家長が力強く押し込んで逆転に成功。さらにその2分後には、左サイドから連係で中に入ってきた三笘が右の旗手に大きく預け、自身はボックスに入る。こちらもルーキーの旗手も王者を相手に臆するところは一切なく、堂々たる股抜きのアシストで三笘のゴールを演出した。三笘は今季8得点としてリーグ4位、日本人としてはトップに。チームの3点目を決めたルーキーペアは、ともに瑞々しい笑顔で抱き合って互いの活躍を祝った。その後は激しい豪雨もあり、1-3のまま今節の大一番は終了した。

“型”を持たないという強さ。

 今のフロンターレを見ていると、クラブに着実に根付いているカルチャーを感じる。

 2012年から風間八宏前監督のもとで技術力を高めてポゼッションスタイルを磨き上げ、2017年から就任した鬼木監督がタイトルを取れるチームに仕立て上げた。同業者のなかには、前監督こそ最大の功労者だと言う人もいるけれど、個人的には現指揮官の貢献度はとても大きいと思う。戦術的には常に世界の最先端を意識しているように見えるし、理想と現実のバランスの取り方が絶妙だ。そしてこの日のように、的確な采配で紙一重の勝負をモノにする。

「相手を見ながらやれる(対応できる)のも、うちの強みですね」と主将の谷口彰悟が試合後に話したように、まさにそこが横浜との違いだったと思う。横浜に就任して3年目を迎えるアンジェ・ポステコグルー監督は、どんな時でも「自分たちのフットボール」を貫こうとするが、それはオートマティズムが確立されたものであり、研究してきた相手に対策を練られると機能しにくくなる。その点、川崎は同じポゼッションとハイプレスの使い手でも、いわゆる“型”はあまり持たず、戦況によって臨機応変に対処している印象だ。試合前のハイレベルなロンドが物語るように、長く培われた高度なスキルと戦術眼、そして自信がそれを可能にしている。

【次ページ】 新戦力の活躍を支えるあの男。

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