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逃げ遅れた4頭が死亡の悲劇。栗東トレセン火災の余波は続く。~厩舎に広がる不安~
posted2020/09/06 08:30
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
KYODO
8月14日、お盆の真っ只中の栗東トレセンの厩舎地区で火災が発生した。消防の発表によると、17時36分に発生して、20時26分に鎮火確認。テレビ局がヘリコプターからの映像を生中継するなど、近隣は物々しく熱い空気に包まれた。
消防隊員が3名、熱風による熱中症などで倒れて搬送されたそうだが、そのほかに人的な被害はなかった。しかし逃げ遅れた馬が4頭死亡し、無事に逃げた馬からものちに気管熱傷が重篤化して安楽死やむなしの判断となったものが1頭出た。熱い煙を吸ったことで、呼吸器系に競走馬として致命的なダメージを負った馬はほかにもいるようで、火事の恐ろしさを改めて思い知らされる事態となっている。
火元は厩舎地区のほぼ真ん中あたり。村山明厩舎の西側だった。栗東トレセンの厩舎は馬場に向かって左側から、「イロハニホヘトチリ」の順に並んでおり、村山厩舎は「ヘ」の14号。夏のローカル開催の時期で、しかも出走馬が確定している金曜日の火事ということで、開催中の競馬場に移動している馬たちも多かったのが不幸中の小さな幸いだった。
大きな影響。原因は不明。
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村山厩舎のエース、コパノキッキング(セン5歳、18戦9勝)も、佐賀の重賞に出走した直後のタイミングで栗東を留守にしていたため無事だった。馬房が満杯状態の通常期なら、もっと被害が広がっていた可能性もあったのだろう。
村山厩舎は、火元に近い西側の10馬房が手の施しようもなく焼け落ちており、命を落とした馬もたまたまそこにいて救出が間に合わなかった。両隣の中尾秀正厩舎、高柳大輔厩舎も、雨どいが猛火の熱で溶けたほどで、熱風被害は小さくない。今後の経過観察や、厩舎の移転など、大小様々な影響が長く続くと想像できる。
エアコンからの発火、煙草の火の不始末など、原因にあげられたものの多くは憶測の域を出ず、警察や消防の調べでも「現時点では不明。ただし、不審な人の出入りはなく、事件性はない」との発表がなされた。少なくとも放火ではないとのことだが、火の気のない厩舎で起きた火災だけに、原因不明のままでは今後が不安過ぎる。トレセン構内の全面禁煙など、抜本的な改善策も考えなければいけないのかもしれない。