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ザックがコンテ監督に“自制せよ”。
EL準優勝も前途多難なインテル。
posted2020/08/30 11:30
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Getty Images
8月21日、ケルンで行われたヨーロッパリーグ決勝。インテルはセビージャに敗れ、2009-10シーズンのチャンピオンズリーグ以来のタイトル獲得はならなかった。
2-3。惜敗である。
ロメル・ルカクのPKで先制した後に一度逆転されたが、前半のうちに追いついてみせた。後半は攻めあぐねた挙句に相手のセットプレーで沈み、優勝は逃すことになる。しかしELファイナルで見せた戦いぶりは説得力のあるものだった。
シャフタールとの準決勝では組織的な堅守で相手の攻撃を無力化し、ルカクとラウタロ・マルティネスの2トップを軸とした攻撃力で5ゴールを奪ってみせたりもした。長年国際舞台では振るわなかったインテルにとって、準優勝はポジティブな評価を下すことができる結果だ。
アントニオ・コンテ監督就任1年目。リーグ戦は2位でフィニッシュ。ヨーロッパでも久々に存在感を発揮した。これを礎とした成長を来シーズンに望むことも可能だろう。
会長の好意的な総括の裏側で。
「今シーズンはポジティブなものだった。優勝は逃したが、ELの決勝に進出するなんて1年前には考えられなかった」
スティーブン・チャン会長は地元メディアに語っている。
だが、チャン会長がシーズンを好意的に総括した裏で、試合後の記者会見では来季への楽観ムードを打ち消すような発言が飛び出した。他ならぬコンテ監督が、退団の可能性もチラつかせながら、経営陣にむけて厳しいコメントを浴びせたのだ。
「どう解釈されても構わないが、すべてに渡って限界があることは話さなければならない。今後どうなろうが、インテルで監督をやるという機会を与えてくれた人物には感謝したい。だが、私はあとに引いたりはしない。私がどうしたいのかは、みなさんご存知でしょう。ミラノに戻って2、3日休暇を取り、その後で1年の分析をして、我々は将来どうすべきか検討することになるだろう。将来、私がいるか、いないかだ」
フロント、それも強化部門に対して何らかのメッセージを放っていたことは、こうした言葉からも窺い知れる。就任1年目、成功に見えたシーズンの裏で、コンテはたびたびクラブの限界と解決すべき問題の存在を訴えていた。