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ザックがコンテ監督に“自制せよ”。
EL準優勝も前途多難なインテル。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/08/30 11:30
セビージャに敗れEL準優勝に終わったインテル。コンテ監督は留任見込みであるが、果たして。
論議を呼んだエリクセン獲得。
まず、チェルシーから獲得を狙っていたマルコス・アロンソの獲得には失敗。チームは早期に獲得目標をアシュリー・ヤングに切り替えた。ヤングは後半戦で左ウイングバックのファーストチョイスとなる活躍を見せたが、右サイドの当てが外れた。
チェルシーからレンタルされたビクター・モーゼスは、トルコのフェネルバフチェでも出場機会を得られていなかったことが示すように、精彩を欠いた。さらに、FWの獲得にも失敗した。
実は、コンテが水面下でオリビエ・ジルーと接触し、移籍の希望を取り付けてもいた。だが、その後動きなし。後にジルーは「コンテ監督にはOKを出したがその後(クラブには)移籍の打診が来なかった」とメディアに語っている。
そして、最大の論議を呼んだのが、クリスティアン・エリクセンの獲得だった。
能力や実績に関しては、誰も疑いを持っていなかった。だが地元メディアや識者からは、「トップ下を本来の位置とする攻撃的MFが、コンテ監督の戦術のなかで順応できる余地はあるのか」と当初から不安の目で見られていた。果たして、懸念は的中する。エリクセンは順応に手こずり、スタメン定着どころか先発でも使いづらい状態となってしまった。
責められるべきは監督かフロントか。
インテルの3-5-2の中盤には、アンカーとして組み立てに関わる役割と、インサイドMFとして守備時に戻り、攻撃時には積極果敢に前へ飛び出す役割が課せられている。問題は、エリクセンのプレースタイルはそのどちらにもハマらなかったということだ。
コンテ監督は彼を活かすためにトップ下を用いた3-4-1-2にシステムを変えてもみたが、そうなると守備のバランスが取れない。結局エリクセンはシーズン終盤ベンチスタートが定位置となってしまった。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は「選手の特性を考えずにエリクセンを獲得してきたクラブへの抵抗」と報じていた。
接戦に持ち込んだEL決勝セビージャ戦も、後半には相手の守備を切り崩せない攻撃陣のアイディア不足が顕著だった。エリクセンを吸収できなかったのが悔やまれる格好だが、責められるべきはフィットに失敗した監督か、合わない選手を連れてきたフロントか。
いずれにせよ、双方が噛み合っていなかった。