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智弁和歌山の細川凌平の帽子の裏。
“日本一”のない夏に全うした仕事。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byNoriko Yonemushi

posted2020/08/19 18:00

智弁和歌山の細川凌平の帽子の裏。“日本一”のない夏に全うした仕事。<Number Web> photograph by Noriko Yonemushi

智弁和歌山が2000年以降、夏の甲子園を逃したのは5回だけだ。それだけに、主将にかかる重圧は重いが、細川凌平はその任を務めきった。

「春、夏が当たり前にくると思っていた」

 それでも和歌山県の独自大会や、選抜に出場予定だった32校による2020年甲子園高校野球交流試合の開催が決定。和歌山大会に臨む前、細川はこう語っていた。

「最後の夏がこんなかたちになるとは去年の秋は考えていなくて、春、夏というのが当たり前にくると思っていたんですけど、当たり前はないんだなと。去年まで日本一への戦いをさせてもらえていたことが本当にありがたかったことなんだなと思います。

 でも和歌山の代替大会も甲子園の交流試合もやってもらえるので、その舞台を用意してもらったからには、強い智弁和歌山を終わらせないためにも、圧倒的に和歌山で優勝して、最後に交流試合の1試合、勝って終わりたいなと思います。最後、本当にこのやってきたメンバーで勝ちたいという思いが強いです」

 特別な代ではなく、いつもの夏と同じようにみんなで勝ちにいく。その思いで最後の夏に臨んだ。

 細川は昨秋の大会後、新しいチャレンジをしていた。中堅手から、中学生以来の遊撃手に転向。プロを目指す上で幅が広がることや、「キャプテンとして、内野にいたほうがチームメイトに何か伝えたい時に全員に響きやすい」という理由からだ。冬場は昨年までショートを務めた名手・西川にも教わりながら急速に上達した。

智弁の看板を背負って和歌山では負けられない。

 ショートでのデビュー戦となった7月の和歌山大会では、スピードを活かした軽快な守備にプロのスカウト陣も「非常に身体能力、センスがある」と感心した。打撃面もミート力の高さを評価されている。

 和歌山大会では力みもあり思うように結果が出ない試合もあったが、決勝では2安打4打点の活躍を見せた。初芝橋本を10-1で下し、和歌山で優勝という今夏の1つ目の目標を達成した後は、充実感にあふれた表情だった。

「自分が崩れるとチームが崩れてしまうので、自分はしっかりしよう、みんなに対してしっかり声かけをしようと思っていました。他の世代の方は経験できないような高校3年生の夏を迎えることができて、こうして大会が開催されることに感謝しながら、優勝をもぎ取ることができたのは本当にうれしい。

 智弁という看板を背負って、このユニフォームを着ている以上、和歌山で負けてはいけない。先輩方が築いてくださった負けない智弁というものをつないでいきたいという思いはありました。結果的にこうやって負けずに終われたことは次の世代にもつながると思います」

【次ページ】 目指したのは、話しやすいキャプテン。

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