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半年ぶりに再開! 来夏を見据えた熱闘。
リードジャパンカップレポート <男子編>
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2020/08/31 14:00
五輪候補・藤井快が強いられた苦戦。
楢﨑と対照的に大会を通じて浮かない表情だったのが、五輪候補の藤井快(TEAM au)だ。予選では1本目のルートBを51人中34位と出遅れ、2本目のAルートで挽回したものの、Aルートの最終競技者の成績次第では予選落ちの瀬戸際まで追い込まれた。
ボーダーラインで滑り込んだ準決勝は西田と同高度を記録したものの、予選順位のカウントバックで2位通過。藤井らしさを垣間見せたのはこの日くらいで、3日目の決勝は「テンポをうまくつくれなかった」と、核心部のランジパートで落下して5位。試合後は「思うような練習ができなかった」と苦悩を吐露した。
「気持ち的にも今大会に向けての取り組みに足りない部分があったなと感じました。いまは練習がしっかりできる状況なので、ここからハードなトレーニングで自分を追い込んでいきたい」
今大会の勝敗をわけたのは、ボルダリング的なムーブを求められた29手目の攻略にあったが、3人の生粋のリードクライマーは攻略し、ボルダラーたちは苦戦した。出場選手のスポーツ環境には、緊急事態宣言下や解除後でも大きな差があるなか、表彰台に立った3選手は、にわか仕込みでは獲得できない持久力を持っていたことでダブルダイノを成功させて高度を稼いだ。
W杯への派遣の可能性が低い中で。
今大会の結果を受けてW杯リードの代表選考は完了。8月21日からはW杯リードがフランスで開催されるが、すでに日本代表の派遣を見送ることが発表されている。これ以降の国際大会でも世界的な新型コロナウイルスの感染状況に鑑みれば、日本代表選手が派遣される可能性は極めて低いと見ていいだろう。
一方でボルダリング、スピードに続いて、リードのジャパンカップが成立したことで、コンバインド・ジャパンカップ(以下CJC)の出場選手を決める順位づけができることになった。藤井は「今年中にCJCがあると予想しているので、そこを見据えてトレーニングをしたい」と語ったが、これは他の選手たちも同様だろう。
いつ、何の大会が行われるか不透明な状況はこれからも続くが、選手たちは牙を研いでいくことになる。
[男子決勝結果]
優勝 西田秀聖(奈良県山岳連盟)
2位 吉田智音(奈良県山岳連盟)
3位 田中修太(新潟県山岳連盟)
4位 楢﨑智亜(TEAM au)
5位 藤井快(TEAM au)
6位 村下善乙(千葉県山岳・スポーツクライミング協会)
7位 樋口純裕(佐賀県山岳・スポーツクライミング協会)
8位 緒方良行