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勝利に徹した帯広農業が示したもの。
9人中4人が2年生、「力がある者を」。
posted2020/08/16 18:00
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Naoya Sanuki
この夏、最大の奇跡だったと言ってもいいかもしれない。
21世紀枠で出場している帯広農業が、昨年秋の関東王者で、神宮大会の準チャンピオンである健大高崎を4-1で破った。21世紀枠のチームが一般選出チームから勝利を挙げるのはじつに5年振りのことでもあった。
帯広農の監督、前田康晴が言う。
「選手たちの中にも意地はあったと思います。21世紀枠はなくした方がいいみたいな話を目にしたり耳にしたりすることもあったので。最後は気持ちの部分ですかね。21世紀枠で選ばれたチームとして、役目は果たせたのかなと思います」
帯広農業の先発メンバーは、「異色」のオーダーだった。
9人中4人が2年生。しかも、そのうち3人は二桁背番号だ。昨年秋、北海道大会で4強入りを果たし、選抜大会の21世紀枠を引き寄せた主力メンバー、一桁番号の3年生の名前が何人も欠けていた。
健大高崎はベンチ入り20人はすべて3年生。
コロナによって甲子園の頂点が消滅したこの夏、各チームとも3年生を優先的に使い、また、できる限り複数の選手を起用する傾向が見られた。対戦相手の健大高崎もベンチ入りメンバーすべてが3年生だった。その上、この試合で投手は5人登板し、全体でもベンチ入りメンバー20人中17人がグラウンドに立った。
この日の第1試合に登場し、3-2で接戦を制した明石商の監督、狭間善徳もこう言った。
「レギュラー以外の子も、みんなかわいい。点差が開いたら、20人全員出してやろうと思っていた。それで最後、デッドボールで退場者が出て9-0で負けてもそれやったらそれでええ、と」