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「自分を見失った」瀬戸大也は
五輪延期に希望を見いだせるか。
posted2020/08/10 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
苦しい言葉が並んだ。
8月3日、競泳の瀬戸大也がスポーツ用品メーカーのオンラインイベントに参加した。
東京五輪が延期になったあと、初めての公の場だったが、そこで語られた胸中には、しんどい思いが込められていた。
「練習を再開しても、気持ち的に身が入らない日々が続いて、練習を休んでしまったりしています」
現在の状況を明かした上で、さらに率直な気持ちを語った。
「正直、自分を見失っていて……」
「オリンピックがあるのでやらなきゃ、とは思いますが、スイッチを入れられていません。正直、自分を見失っていて、何を目指したいのか、分かっていません」
瀬戸は今日の日本の競泳で、エースと目される存在だ。
昨年の世界選手権では2大会ぶり3度目の400m個人メドレー優勝を果たしたのをはじめ、200m個人メドレーでは初優勝、200mバタフライでも銀メダルという好成績をあげた。
1大会での個人種目3つのメダルは日本で初めてのことだったし、世界選手権通算での4つの金メダル獲得となったが、これも日本で初めてだった。
世界選手権を経て、日本水泳連盟の規定にのっとり、400m個人メドレーでの東京五輪代表内定を、いち早く手にすることになった。そして現在でも、日本競泳唯一の五輪代表内定選手でもある。
順調そのもの、とも映る足取りの原点は、2016年のリオデジャネイロ五輪である。
400m個人メドレーで銅メダルを獲得したが、目指していたのは世界一だった。初の大舞台での予選、準決勝、決勝と続くレース展開において、悔いも残した。