大事なのは派手なホームランの「後」。

　相手は右のサイドハンド。差し込まれるようなスピードはなくても、あの角度から投げてくるボールは勝手にいろいろ動いて、意外と打ちにくい。それを、ファーストスイングで両翼98ｍ、センター122ｍの広い広い長良川球場の左中間いちばん深い所へ、しかもライナーで。パワーだけじゃ絶対できない。バットを芯で捉えて遠くへ運ぶ「技術」があればこその一弾だった。

　もっとよかったのは、そのあとだ。

　最初の打席であれだけのホームランを打てば、普通の高校生なら、さあもう1本！ と気負って力んでオーバースイングになるものだ。

　2死一塁で迎えた第2打席。一塁手がベースに入って広く空いている一、二塁間を狙ってボールを叩きつけるようにライト前に持っていき「一、三塁」を作る。

　さらに第3打席の素直なセンター返しのヒットの打ち方には、過去2回のハードなスイングをクリーニングして、左中間を「センター」に見立てて強く打ち返す本来のスタイルを取り戻そうという“狙い”を感じていた。

岡本和真を思い出す冷静さ。

　欲望にかられて燃え過ぎない、ほどよいメンタリティー。

　智弁学園当時の岡本和真（現・巨人）が、こんな感じだった。

　レフトスタンド上段に放り込んだ後の打席は、丁寧なセンター返しだったり、痛烈なセンターオーバーであったり、自分本来の「インサイドアウト」のスイング軌道を確認するような打ち方を繰り返す。

「飛距離」が自らのスイングスタイルを壊すこともあることを、この雄大な体躯を持った2年生スラッガーもわかっているような……そんな「3打席目」だったから、最初の打席の「左中間弾」よりすごい！ と驚いた。

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