20年前命を絶ったヤクルトのエース、
高野光の遺品整理で出てきたもの。

　指定されたマンションの一室を訪れると、すでに荷物は片づけられておりがらんとしていた。

　部屋の中央には衣装ケースがぽつんと置かれ、壁際にはいくつかのトロフィーが並んでいる。

　何もない殺風景な部屋の中でひときわ目立っていたのが「初勝利」と書かれたボールを手に持ち、満面の笑みを浮かべている若者の写真パネルだった。

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　その若者こそ、かつてヤクルトでエースとして活躍した高野光さんだった――。

高野さんの妹さんが応対してくれた。

「高野さんのご遺族の方が遺品を整理したいと言っているんです……」

　今月上旬、熱心なヤクルトファンの友人から、そんな話を聞かされた。彼の知人が高野さんのご家族と今でも親交があるのだという。

　このたび、高野さんのご高齢のお母様が施設に入ることになり、お母様の住むマンションにある息子の遺品を整理したいということだった。そこには、数々のトロフィーや表彰状、新聞のスクラップ、試合ビデオなどが大切に遺されているのだという。

　すでに片づけが済んでいる部屋で応対してくれたのは高野さんの妹さんで、「必要なものがあったら何でも持っていってください。ヤクルトファンの方にもらっていただくのは兄も本望でしょうから」と迎え入れてくれた。

　さっそく、手元のスクラップブックを手に取る。そこには、懐かしい背番号「34」の雄姿が刻まれていた。一瞬にして、80年代の思い出がよみがえる。

　土橋正幸、関根潤三監督の下で孤軍奮闘していた高野光が鮮やかに立ち上ってくるようだった。

【次ページ】　1992年に1076日ぶりの復活勝利。