オリンピックへの道BACK NUMBER
体操・内村航平と寺本明日香の決断。
見出した可能性と羽生結弦のあの曲。
posted2020/07/19 19:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
これまで五輪で日本が31個の金メダルを獲得し、お家芸とも言われる体操。その体操も大会の日程が決まり、少しずつ動きを取り戻している。
その中で選手は自身の道を模索する。男女の代表を支えてきた2人もそうだ。
さまざまな大会のスケジュールが変わる中、男子の柱として牽引してきた内村航平にとって久々の実戦となるのは全日本シニア選手権。大会は9月20日から22日にかけて、群馬県の高崎アリーナで開催される予定だ。
内村はこの大会に向け、思い切った決断をした。出場する種目を鉄棒に絞ったのである。
この大会に限ったことではない。来年に延期された東京五輪も、鉄棒で目指していくことを先だって、明らかにした。
個人総合と団体総合における出場を捨てる決断。
内村はこれまで自らの身体と戦い続けてきた。
昨年、両肩痛の影響で4月の全日本選手権で予選落ち、世界選手権代表からは外れてしまう。
「東京オリンピックは、夢物語ですね」
そのひとことに、心中はありありと表現されていた。
それでも再起を期した。その過程にあって、肩痛は容易に消えなかった。痛みを和らげるために注射を打っても、なかなか消えず、練習に響いた。特につり輪などは、肩への負担が大きい。オールラウンダーの自負を持ちつつ、でも十分に練習できない。ジレンマはどれほど大きかったか。
それでもオリンピック出場を模索し続けた。結論が、鉄棒で目指すことだった。
裏返せば、個人総合と団体総合における出場を捨てる決断でもあった。
「6種目、すべてを美しくこなしてこそ、体操だと思っています」
ときに表し方はかわっても、オールラウンダーであることにこだわってきた。また、団体への思いも強かった。