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羽生を後押しした「友情力」。
高橋成美が芸能の道へ転身。
~フィギュアから女優へ~
posted2020/07/21 07:00
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
AFLO SPORT
ソチ五輪にペアで出場し一昨年に引退した高橋成美が、驚きの転身を遂げることになった。松竹芸能は7月、“初の元オリンピック選手”として高橋の所属を発表した。
「スケートで培った根性と感性を、これから芸能の道へ最大限に活かして成長した姿を皆さまにご披露できるように極めていきます!」
と高橋もコメントした。
これまでも変化と挑戦を繰り返してきた。3歳でスケートを始め、父の転勤で中国に移住すると中国代表に。ペアに転向し、帰国後は'07年からカナダ人のマーヴィン・トランと組み、'12年世界選手権で日本ペア初の銅メダルを獲得した。'13年からは木原龍一と組み、ハードな練習の末、わずか1年後の五輪出場も叶えた。
ペア選手の宿命ともいえる怪我を繰り返しながらも現役を続行し、'16年には、すでに引退から6年が経っていた柴田嶺に猛アピールをし、柴田を復帰させた。'18年に競技引退を決意すると、昨年5月にはアイスホッケーへ転向。そして女優への転身である。しかも語学が趣味で、7カ国語を話す。バイタリティの塊だ。高橋はペアの魅力を「本番の最後まで手を繋ぎあい、同じ結果を喜んだり悲しんだりすること」と言い、自分の演技に集中する以上に、仲間と励ましあうことも彼女の信条だ。
「ユヅ、ガンバー」
高橋の友情パワーは、ソチ五輪団体戦の日にも溢れた。団体戦の初日は、男子シングルの後がペアというスケジュールで、羽生は男子シングルの最終滑走、高橋&木原はペアのトップバッター。そのため羽生の本番は、高橋が自分のウォーミングアップをしなければならないタイミングだった。しかし高橋はわざわざリンクサイドに現れ、誰よりも大きな声で「ユヅ、ガンバー」と声援を送った。
羽生はパーフェクトの演技後、こう語った。
「6分間練習の時に、特に成美ちゃんの声が聞こえました。心強かったです。今日、全力で滑れたので、非常にいい感覚で個人戦までいけると思います」
高橋の声援は、日本男子初の金メダルを後押ししていたのだ。天真爛漫に周りの人を幸せにしてきたチャーミングな高橋。次なる挑戦でも、周りに笑顔を伝える人生を歩んでいくのだろう。