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駒野友一と松井大輔の6月29日。
南アフリカW杯が僕らを変えた。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAsami Enomoto
posted2020/06/29 11:30
2014年撮影。涙を流したパラグアイ戦から4年後、所属していた磐田の練習場で「逆バージョンや」と笑う駒野(右)と松井。
和食で胃腸炎。でも充実感があった。
'04年以来10年ぶりのJリーグ復帰を決断した松井は、駒野に電話を入れて磐田に籍を移した。
10年間の海外生活で食生活がすっかり変わっていたとはいえ、和食が原因で2度も胃腸炎を患ったことには自分でも驚いた。しかし、キャプテンとして変革期の真っ只中にあるチームを牽引する仕事には特別な充実感を覚えた。
「4年間、あっという間でしたね。いろいろありましたけど、後悔はしてません。人それぞれ、いろんな生き方がありますから」
どんなに年を取っても、出たい。
5月12日、ザッケローニが読み上げたブラジルW杯のメンバーリストに、2人の名前はなかった。
目指したゴールに届かなかった今、1人のプロフェッショナルとして、彼らはどこに向かおうとしているのか。相変わらず小さな声に、駒野は強い気持ちを込めた。
「サッカー選手なので、楽しめないと終わり。だから、より高いレベルでやるという目標を持ち続けたいと思います。今回で終わりとは思いたくないし、まだまだやれる自信があります。諦めたくはないですね」
松井もやはりW杯への思いを語るのだが、言葉に込めるエネルギーは駒野に比べてはるかに小さく感じられた。それとも、そう簡単に“本気度”を見せないのが松井流か。
「とりあえず、ジュビロで頑張ります。その後はどうなるか分からないけど、4年後のW杯と、オーバーエイジ枠での五輸出場を目指したい。可能性があるものは全部出たいですよ。サッカーをやっていれば、頂点はそこですからね。どんなに年を取っても、出たいと思うのが普通じゃないですか? それでいいと思いますよ、俺は」
(Sports Graphic Number 2014年7月9日臨時増刊号より)