濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
木村花の“不在”と向き合いながら。
スターダム、新戦力も登場の興行再開。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2020/06/27 20:00
3カ月ぶりの試合を終えたジュリア。リングを降りる直前、拳を天に向かって突き上げた。
ジュリアが突き上げた拳の先には……。
メインイベントの8人タッグマッチには、花のライバルだったジュリアが登場した。ジュリアのスターダム入団と同時に両者は大乱闘を展開。シングル対決はケンカマッチと評される激しいものになった。
完結することのなかったライバルストーリーを背負い、ジュリアはこの日のリングに立っていた。試合中に見せたランニングキックの助走は、花が得意としていたムーブだ。チームが勝利を収めるとジュリアは観客にこう訴えている。
「この3カ月間、自粛、自粛で。いろんなことがあり、みんな辛かったし苦しかったと思います。我々もそうです。でも、スターダムはここで止まっているわけにはいきません。いろんなものを弾き飛ばして前に進まなくちゃいけない」
リングを降りる際、ジュリアは天に向かって拳を突き上げている。昨年12月の初対戦が時間切れ引き分けに終わると、花とジュリアは“グータッチ”をしてリングを降りた。もう1回やろう。そう誓い合うグータッチ。ジュリアは同じ拳を、今度は上に向けたのだ。その方向に誰がいたのかは言うまでもない。
初登場「ひめか」の決意とは。
このメインイベントでは、スターダム初参戦の選手がフィニッシュをものにしている。3月まで有田ひめかのリングネームだった「ひめか」だ。所属団体を3月で退団、次の選択が注目されていたが、ここでジュリアのユニット「ドンナ・デル・モンド」の新メンバーとしてサプライズ登場を果たしたのだった。身長170cmを超える大型レスラーらしく、アルゼンチン・バックブリーカーで飯田沙耶からギブアップを奪っている。
「スターダムはキラキラしてて未来があって、プロ意識の高い選手が集まっているリングというイメージがありました。試合をしてみて、その通りだったなと。この中で第一線で闘える選手になりたいし、自分にしかできないプロレス、大きい体だからできるプロレスをたくさんの人に見てもらいたい。スターダムはリングの中も外も、すべてにおいてトップレベル。次にどこで闘うかと言ったらここしかないなって。甘くない場所だと思うけど、自分に厳しくしないとこの世界では生きていけないので」
大会後に話を聞くと、ひめかはそう語った。もともとはアイドル。全日本プロレスの「応援大使」として活動することでプロレスを知り、グループ解散後にレスラーの道を選んだ。心無いファンに“アイドルに何ができる”とも“もっとアイドルらしく”とも言われてしまう立場で彼女が選んだのは“本格派”の道だ。スターダム参戦に当たり、体重を10kg以上落としたとも聞く。口調そのものが、以前よりシャープになっているようでもあった。それが彼女のプロ意識なのだ。23歳、将来性のある大型レスラーの参入は、スターダム戦線の活性化にもつながるだろう。