河田は打てて守れて走れる外野手。

　中京大中京高2年夏の甲子園で、1番・河田航平中堅手は1回戦で打ちまくった。ホームランが出ていれば「サイクル達成」だった。

「正式な機械計測で50ｍ5秒8。盗塁もできます。刺せる肩もあるし、打球の上がり方なんか見てると、やっぱりモノが違うなって。栗林（良吏、現・トヨタ自動車）なんか、かなり打ち込んでましたから。1試合5打点なんてこともありましたね」

　プロに近いレベルで、走攻守三拍子揃っていると、半田監督が太鼓判を押す。

「野球だけじゃないですね、頭もいいし、野球以外の興味も旺盛。1人の学生としても優秀なヤツですね」

　右の打てて守れて走れる外野手は、プロが求めるタイプに違いない。

　そういうタイプの外野手、この2年間で、JR西日本・佐藤直樹（2019年ソフトバンク１位）くらいしかプロに進んでいない。

「安倍さん、見たことあります？」

「実は、藤野で日本一狙ってたんです！　藤野なら獲れる……藤野で全国獲れなかったら、当分獲れない。そこまで思ってたんですから、私！」
そこまで一気にまくし立てた。

　なんでウチの藤野なんですか？

　取材をお願いした時、最初にそう問い返されたので、だってあんなピッチャー、プロにもアマにもどこにもいないでしょう……と答えたら、その答えが中村壽博監督のテンションスイッチを押してしまった。

「そうですよね！　見たことないです！　今まで、どこでも見たことないです！　そうでしょ、安倍さん、見たことあります？　1メートル90あってサイドハンドで、両サイドにきっちりラインが作れて、試合でノックアウトなんて一度もないんですよ。そんなピッチャーなんて、プロにもいないと思いませんか、安倍さん？」

　のっけから、もう止まらない、止まらない。

　こんなすごいピッチャー、どうして誰も注目しないんだろう……と悶々としていたところに、今回取材をお願いしたものだから、一気に高揚してしまったようだ。

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