サムライブルーの原材料BACK NUMBER
ロンドン五輪に学ぶ。あのサラーも
抑えた、徳永悠平「いつもどおり」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byFIFA via Getty Images,Asami Enomoto(in the article)
posted2020/06/01 11:30
ロンドン五輪のエジプト戦では、今や世界最高のストライカーの1人であるサラー(左)を抑え、3-0の勝利に貢献した徳永。
「お前じゃないとダメなんだ」
OAとして先に名前が挙がっていた吉田麻也はオリンピック世代より年齢が1つ上。A代表でもレギュラーを張る。
一方、自分は28歳で「かなり上」でA代表に定着できているわけではない。それにOAはチームの結果に対して大きな責任を担う重要な役回りだ。それを背負えるのか確固たる自信を持てなかった。
「だって周りを見たら彼らの世代に年齢が近くて、いいサイドバックはいましたからね。大事なOAを自分がっていうのは……。もちろんアテネで不完全燃焼に終わった悔しさはあります。やってみたいという気持ちと、俺でいいのかっていう気持ち。その両方の気持ちがありました」
目の前にいる関塚は、気持ちをグイと引っ張るように強い口調になった。
「お前じゃないとダメなんだ」
覚悟は決まった。
本番になったらやれるっしょ。
実際、初めて合流した壮行試合ニュージーランド戦ではスンナリとチームに入っている。
「元気のいいヤツらばっかりで、最年長の自分に対しても全然気を遣わない(笑)。むしろそれで良かったんですけど」
壮行試合は圧倒しながらも1-1のドローに終わり、スタンドからはブーイングが飛んだ。失点のきっかけをつくったチームメイトに「次だ、次」とさりげなく声を掛けるあたりも徳永らしい。
本番で良ければ、それでいい。初戦のスペイン戦まであと2週間しかない。短期決戦を18人のメンバーで乗り切っていくには下を向く時間すらもったいない。8年前のアテネでそう感じた徳永は、チームを俯瞰して見ても特段、心配する必要はなかったという。
「“本番になったらやれるっしょ”みたいな雰囲気があったし、僕が特に何かを言う必要もなかった。いい選手がいっぱいいたし、本大会までに仕上げていけばいい感じになるんじゃないかなっていう感覚が僕のなかにはありました。関さんから『チームの感触どうだ?』と聞かれて『本番はやれるんじゃないですか』って答えたことを覚えています」
週末のJリーグをこなした後、チームはイギリスに飛ぶ。ノッティンガムでベラルーシと強化試合をこなした後、宿舎では選手ミーティングが行なわれた。
OA2人が入った初めての試合で、欧州に残っていた宇佐美貴史、酒井高徳も合流。「対世界」を見据えて守備を整備すべく、選手側からも意見をまとめて関塚に報告している。