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藤井聡太、コロナ禍に隠れた快挙。
棋士レーティング首位の価値とは。
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byKyodo News
posted2020/05/17 08:00
2月の王位戦挑戦者決定リーグ白組で羽生九段(左)を破った藤井七段。すでに将棋界の顔といえる17歳はコロナ禍の中でも棋力を上げている。
渡辺明、羽生善治の最高値は?
藤井のいまのレーティングは、言うまでもなく彼のキャリアハイである。デビュー以来、右肩上がりを続けて、ついに全棋士のトップに立ったのだから、もっと大きく称賛されていい。
このサイトの計算による過去最高は、渡辺明が'19年12月13日に王位戦予選で佐藤天彦九段を下したときの2016。あの羽生善治でさえ、'14年7月に森内俊之九段を棋聖戦第3局で破ったときに2003まで上げたのが最高である。
ただし'96年に日本中を沸かせた七冠独占の時代には、渡辺明以上のレーティングに達していた可能性があるのだが。
FIFAランクも使用のレーティング理論。
ここで採用されているレーティング理論は、イロレーティングという名のそれ。ハンガリー生まれの米国人物理学者アルパド・イロさん(チェスの名手でもあったという)が設計したものだ。
国際チェス連盟がランキングに採用しているのは当然のこととして、サッカーのFIFAランキングや、ラグビー、テニスなどの一部競技団体もこれを公式に使用している。
個人競技はもちろん、対戦型の団体競技においても、イロレーティングによって算出された点数で順位付けするのが最も公平であると世界に認められているのだ。
首位に立ってからレーティングを上げ続けるのは並大抵ではない。点が上の人(チーム)が勝つのが当たり前というのが理論の前提だからだ。
極端な話、400点以上の差の相手には仮の勝率が100%と算出されるので、勝っても1点しか加算されず、負けると15点の減算。もっと現実的な例をあげれば、豊島竜王名人と対戦した場合でも、勝てば7点加算、負ければ9点減算なのだから、いかに藤井聡太でもこの先の右肩上がりを維持するのは非常に難しい。
だからこそ、2000がひとつの天井として存在していると推測できる。