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藤井聡太、コロナ禍に隠れた快挙。
棋士レーティング首位の価値とは。
posted2020/05/17 08:00
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph by
Kyodo News
「将棋連盟 棋士別成績一覧」という、非常に優秀なサイトがある。
全プロ棋士の公式対局の結果がほぼリアルタイムで更新され、同時にレーティングを算出してくれる。
'03年の12月から始まったと明記されているが、棋士のどなたに伺っても「誰が運営しているかは知りません」と言う。日本将棋連盟の手によるものと考えるのが自然だが、同連盟は公式にはレーティングを認めてはおらず、棋士の実力を数字で評価した記述は見たことがない。
新型コロナウィルスの影響は、将棋界にももちろん波及していて、日程通りならとっくに始まっているはずの名人戦、叡王戦など、タイトル戦はストップした状態となっている。
注目の藤井聡太七段は、愛知県在住の現役高校生という立場でもあり、東京、大阪、どちらの将棋会館で対局したとしても、好ましくないとされている県をまたいだ移動を余儀なくされる。
高校生にそんな危険なことをさせるわけにはいかない、というわけで、勝ち進んで佳境を迎えている彼の対局も4月10日を最後に止まったままなのだ。
4月の対局で「1953」まで上昇。
レーティングにも大きな変化などあるはずがないと思っていたが、“大事件”は起きていた。藤井聡太が全棋士のトップに立っていたのだ。
4月3日に千田翔太七段との竜王戦3組準決勝を戦い、勝ったその時点で1947にレーティングを上げ、'19年2月以来レーティング首位の座にドンと居座っていた渡辺明三冠をわずかに抜いて、僅差とはいえ初めて首位を奪取。その後、4月10日に菅井竜也八段との王位戦挑戦者決定リーグでも勝利をあげたことで、最新の藤井聡太のレーティングは1953となった。
渡辺明も今年度最初の対局(対増田康宏六段。王座戦挑戦者決定トーナメント1回戦)に勝利して1950としたが、順位は2位のままだった。
ちなみに3位は永瀬拓矢二冠の1934、4位が豊島将之竜王名人の1928だから、藤井がすでにタイトル保持者に相応しい実力に達しているのが、間違いのない数字で伝わってくる。