野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
BC神奈川の秘密兵器、杉浦健二郎。
「僕が独学で150kmを投げるまで」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byTomosuke Imai
posted2020/05/17 10:00
150kmを計測したトライアウトでは、打者4人を相手に無安打2奪三振。自ら立ち上げた草野球チーム「相模台レイダース」は後輩に譲り、最短でのNPB入りを目論む。
自分の体でできる、プロの投げ方を。
えー……野球版のイタコみたいなものでしょうか。
「うーん……たとえばですね。僕が大谷翔平投手を入れたとしても、160kmを投げるどころか、腕が出てこなくなってしまうんです。それは骨格や腕の長さなど身体の作りが違うこと。そして下半身の使い方、特に僕は骨盤の回し方が上手くないので腕が出てこなくなってしまう。
あくまでもベースの身体や強度などは自分ですから、そこにマッチする投げ方を当てはめていく感じですね。トライアウトの時のベースは千賀投手でしたが、今は完全に山本由伸投手になっていますよ」
漫画のような話ではあるが、これが杉浦健二郎という野球選手である。
初スピードガンで150km。
2019年11月12日。BCリーグの合同トライアウトに、憧れの吉田正尚然とした外野手として参加した杉浦は、千賀モードでテスト初日のブルペンに入る。慣れない硬球を握り、ラストに投じたここ一番の“必殺”のボールは唸りを上げてキャッチャーミットにドーン。
スピードガンは150kmを計測すると、各チーム首脳陣は唸りをあげ、後日のBCリーグドラフト会議で、神奈川フューチャードリームスの新球団優先枠、全体の1位として指名を受けた。まさにドリームでフューチャーな野球人の誕生である。
「スピードガンで計測したのはトライアウトの日がはじめてじゃないですかね。ブルペンで十何球か投げましたが、初球から142、43kmぐらいで『ラスト1球』の声が掛かってから、例のスピードが出るフォームで思い切り投げて150kmが出ました。
でもあの投げ方だとやっぱり肘に負担が掛かってしまう。独立はレベルが高いと感じていますが、そこは焦らずにまずはケガしないこと。そして1球目と最後のボールでもフォームが変わらず150kmを投げたいというのが、今の考えです。そのために今は投球フォームを、山本由伸投手をベースにしたまったく新しいものにしています。独立という環境で自分がどこまでいけるのか、すごく楽しみですね」