濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
試合激減でレスラーはどう生きる?
“絶対不屈彼女”安納サオリの肉声。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2020/04/20 11:30
今年からフリーになりスター街道まっしぐら! のはずが、新型コロナ禍で試合が大幅に減ってしまった安納サオリ。その胸中は……。
多くの偏見とも戦ってきたレスラーとして。
演劇・芸能活動とレスラーの同時進行という活動の仕方は、プロレス界においてはまだ風当たりが強い。
「プロレスをナメんな」、「アイドル崩れが」という偏見丸出しの声と闘ってきたのがアクトレスガールズで、その団体を引っ張る初代王者が安納だった。
「私はプロレスも100%、女優も100%です。“芸能人のプロレスはこんなもんか”と言われないように必死でしたね。あんまり努力を見せるもんじゃないと思うから、家の布団の上で練習したり……これは人に言っちゃダメですよ(笑)」
つまり彼女は、そのキャリアの中で常に“安納サオリはどうあるべきか”を模索してきた。
団体所属ではなくフリーになることで「余計に自分のことに集中できるようになりました。写真を見比べると、今のほうが楽しそうな顔してますね」。
「いつリングに上がっても大丈夫な準備だけは」
今、この“緊急事態”でも、家での筋トレくらいしか練習ができなくても、レスラーとしてのベースは変わらない。安納サオリがより輝くためには何をすべきか。それを考えるのが第一なのだ。
「思いついた技や動き、ヒントになる言葉をずっと書いてるんですよ。『安納メモ』っていうんですけど。今は書くペースが上がってますね。考える時間があるからどんどんアイディアが出てくる。
たぶん、今この時期に何をしていたかで今後の“安納サオリ”が決まってくると思います。いつリングに上がっても大丈夫な準備だけはしておかないと」
“コロナ禍”の長期化から、最近は多くの団体、選手が新たな試みを始めている。
この機会にとグッズ通販のサイトを立ち上げた選手もいる。安納もその1人で、ツイッターには個人アカウントだけでなく情報発信用のスタッフアカウントもできた。
インターネットテレビ『ABEMA(AbemaTV)』の格闘チャンネルは、K-1やRISEの選手たちにそれぞれの試合のダイジェスト版を配布し、SNSの充実に協力している。これは選手からのリクエストに応えて始めたものだそうだ。
「たくさんの選手から同時期にリクエストがきて驚きました。我々としても、ファンのタイムラインから格闘技の映像が減らないようにしたいですから」とあるスタッフは言う。