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槙野智章にとっての「運命の一発」。
宇賀神の祝福と「浦和の漢」の歌詞。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/04/16 11:50
槙野智章がレッズに完全に受け入れられた瞬間。そのシーンに宇賀神がいることも味わい深い。
「きついお叱りを受けました」
ピッチもスタンドも、お祭り騒ぎさながらに。しかし、これを聞いて、ピッチ脇で慌てたのは浦和のフロント陣。当時、槙野はドイツのケルンからレンタル移籍中で、来季の契約はまだ何も決まっていない状況だった。本人が気分よくロッカールームに戻り、リラックススペースでくつろいでいると、強化部長が血相を変えて飛んできたという。その後の顛末は、想像に難くない。
「きついお叱りを受けました」
天皇杯で初めて流れた槙野の歌。
それでも、硬派で知られるファン・サポーターへ心の底から発した熱い言葉は届いていたのだろう。リーグ戦を終えた後の天皇杯では、初めて槙野の歌が会場に響き渡った。
「熊谷(スポーツ文化公園陸上競技場)で行われた天皇杯でファン・サポーターの方が、初めて僕の歌をつくってくれて、歌ってくれたんです。ウォーミングアップ中にそれを聞きました。歌詞に浦和の漢(おとこ)が入っていたのもうれしかった」
このとき、浦和で認められたことをしみじみと実感した。その年の12月に完全移籍を果たし、今季で赤いユニホームに袖を通して9年目。今年5月で33歳を迎えるが、いまも初心を忘れていない。