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槙野智章にとっての「運命の一発」。
宇賀神の祝福と「浦和の漢」の歌詞。 

text by

杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byJ.LEAGUE

posted2020/04/16 11:50

槙野智章にとっての「運命の一発」。宇賀神の祝福と「浦和の漢」の歌詞。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

槙野智章がレッズに完全に受け入れられた瞬間。そのシーンに宇賀神がいることも味わい深い。

いつもは駆け寄らない宇賀神が真っ先に。

「FKのスペシャリストが2人もいたのに、あの場面でよく『蹴らしてくれ』と言ったと思います。マルシオは『いいよ』と譲ってくれたのですが、柏木には『中に合わせるか、マルシオに蹴らしたほうがいい』と言われました。でも、あのときは『俺が蹴る』と頑なでした。柏木も、その空気を察してくれたのでしょうね」

 長く助走を取り、右足で放った渾身の一発は、GKが構えるサイドへ一直線。ボールはホップし、左ポストに当たって、ゴールネットを揺らした。

 次の瞬間、脱いだユニホームを右手で振り回しながら左のコーナーフラッグに向かって走り出すと、後ろからすぐに追いかけてきたのは宇賀神友弥だった。そこからほかの仲間たちも次から次に駆け寄ってきた。

「僕が浦和に入ったばかりの頃、チームに提案したことがあるんです。ゴールを決めた選手にみんなで駆け寄り、みんなで祝福しようよって。それを話してから、得点後は選手たちの集まるようになったのですが、ウガ(宇賀神)だけは来なかった。

 いまでもそうです。ウガはウガなりの考えがあって、ゴールの余韻に浸ると、集中力を低下させてしまうからすぐに自分のポジションに戻るんです。でも、あのときは、一目散に来てくれました」

槙野「来シーズンも僕は」

 この一発がダメ押しのゴールとなり、試合は2-0の勝利。他会場の結果にも助けられ、最終的に3位まで順位を上げて、2008年以来となるACL出場権も獲得。「WE ARE REDS」の大合唱でスタジアムは揺れ、ボルテージが最高潮に達するなか、ヒーローインタビューでマイクを向けられた熱い男は、興奮冷めやらぬ様子で自らのゴールを振り返った。

「世界のディフェンダーのなかでも、3本の指に入るくらいシュート練習をしてきました」

 そして、熱狂するファン・サポーターに向かって、大きな声で宣言する。

「来シーズンも僕は、浦和の選手とともに戦いますので、みなさんも一緒に戦いましょう」

【次ページ】 「きついお叱りを受けました」

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