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2020年ドラフトを1人で予想3/3。
巨人のテーマは即戦力投手と……。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2020/04/15 08:00

2020年ドラフトを1人で予想3/3。巨人のテーマは即戦力投手と……。<Number Web> photograph by Kyodo News

東洋大・村上頌樹の評価は極めて高い。3年の春には東都リーグのMVPも獲得している。

ソフトバンクは外れ1位が面白いが。

〔福岡ソフトバンクホークス 2020年ひとりドラフト指名選手〕
1位 投手 村上頌樹(東洋大) 174cm75kg 右投左打
2位 遊撃手 大庭樹也(専修大) 182cm77kg 右投右打
3位 投手 下慎之介(健大高崎高) 183cm83kg  左投左打

〔総評〕 
 競合になった村上頌樹のくじを引くとき、正直に言えば外れないかな……と期待していた。

 ソフトバンクは、抽選を外した後の「繰り上げ1位」が面白い。

 昨年は東邦高・石川昂弥(現・中日)を外して、JR西日本の新鋭外野手・佐藤直樹に切り換え、一昨年は報徳学園・小園海斗を外し立命館大・辰己涼介を外して、東洋大の150キロ腕・甲斐野央を獲得。

 その前の「2017ドラフト」では、早稲田実業高・清宮幸太郎(現・日本ハム)、履正社高・安田尚憲(現・千葉ロッテ)、仙台大・馬場皐輔(現・阪神)を立て続けに外して、どうするのかと思ったら、誰も考えなかった(失礼!)鶴岡東高の本格派右腕・吉住晴斗の名前を挙げて、ドラフト会場をシーンとさせてみせた。

 ところが、ドラフトとは気まぐれなもので、最近3年間、こんなに苦戦していたソフトバンクが、DeNA、巨人との三つどもえの争奪戦にあっさり勝利してしまった。

 身長は人並みなのに、球筋に角度があって、空振りを奪える速球の質が村上頌樹の“才能”。スライダー、フォーク、チェンジアップ、どの球種でもいつでもストライクをとれるのが、「最も勝てる投手」の理由だ。

 今春のキャンプで故障したエース・千賀滉大と昨季新人王の高橋礼。勝ち頭の2人に見通しがつかない状況だから、右ヒジ手術から復活の東浜巨や、左肩の違和感からカムバックの和田毅の頑張りがあったとしても、不安は残る。

 ソフトバンクというチームの総合力をバックに、ノルマは「15勝」。体の負担を最小限に抑える合理的なフォームと強靭な心身なら、決して重いとは思えない。

今年のテーマは勝てる投手と次期遊撃手。

 2位の大庭樹也は、「繰り上げ1位」の可能性もあった。

 今回のソフトバンクのテーマは、「勝てる投手」と「次期遊撃手」。

 1年目から勝ちを計算できる投手がごく少ない中、ならば確実に遊撃手を……となれば、いきなり「大庭」も大ありだった。

 今年の社会人・大学・高校生を見渡して、バッティング能力を伴う守れる遊撃手となると、まず大庭が挙がってくるのは、順当なところだろう。この大型遊撃手が、プロ野球界を代表する遊撃手にのし上がった今宮健太と同じ「大分・明豊高」の出身なのは、単なる偶然に過ぎない。

 遊撃手としてのタイプでいえば、むしろ巨人・坂本勇人。背格好、弾力に富んだ走攻守の身のこなし、ライナー性の長打力と強肩。しゃにむに練習に励んだら“本家”に近づける。

 目論見通りに上の2人が決まったから、ちょっと余裕ができて「将来性」に目を転じた。

 長身から投げ下ろす高校生左腕で、これだけ制球に破綻なく低めに集められるのはなかなかいない。下慎之介の“買い”はそこだ。

 力を入れて投げようとし過ぎない。ほどよく脱力できるテークバックから、体の左右を一気に切り替える瞬間の爆発力。だから、左腕にしか投げられないクロスファイアーが、右打者の内ぶところに突き刺さる。

 王者・ソフトバンク、今回もうまいこと、頭の3人を押さえたようだ。

【次ページ】 巨人は東海大の即戦力投手。

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