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無観客開催に1位入線馬の降着。
波乱の高松宮記念で輝いた松若風馬。
posted2020/03/30 11:50
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
太平洋戦争が激化した1944年、皐月賞やダービーなどは、観客を入れず、馬券を売らない「能力検定競走」として行われた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、それ以来76年ぶりの無観客GI(級レース)となった第50回高松宮記念(3月29日、中京芝1200m、4歳以上GI)は、激しい叩き合いによる大接戦となった。
当日の午前まで降りつづいた雨のため、中京の芝コースは重馬場になっていた。
ゲートが開いた。「逃げ宣言」をしていた9番人気のモズスーパーフレア(牝5歳、父スペイツタウン、栗東・音無秀孝厩舎)が、宣言どおりに先手を取った。鞍上の松若風馬が軽く促しただけで楽にハナに立ち、2番手を3馬身ほど離した単騎逃げの形に持ち込んだ。
2番手以下は比較的かたまり、重心を後ろにかけて手綱を引いて制御する騎手が複数いた。最後尾のアイラブテーラーだけが大きく離される展開となった。
ラスト300m、初めてステッキが入る。
前半600m通過は34秒2。後半600mは34秒5。数字のうえでは平均ペースだ。
モズスーパーフレアが快調に飛ばし、楽な手応えで先頭をキープしたまま直線へ。
松若は、そこから馬場の真ん中に持ち出すのではなく、内埒から馬1頭分ほどの、馬場が荒れ気味に見えるところを進んだ。馬場状態のいいところを走らせることより、コースロスと、進路を変えることによるストライドのロスをなくすことを優先させた。また、逃げ馬によく見られる特性なのだが、あえて内埒に頼らせることで、力を引き出そうとしたのかもしれない。
ラスト400m地点。2番手との差は変わらず、手綱も持ったままだ。ラスト300mあたりで手綱をしごき、初めて右ステッキを入れた。
ラスト200m地点でも、最内のモズスーパーフレアが先頭に立っている。
が、和田竜二のクリノガウディーが外から凄まじい脚で伸び、見る見る差を縮めてくる。
その内から北村友一のダイアトニックも猛然と追い上げてくる。