酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
藤浪晋太郎の勇気と復活を信じたい。
大阪桐蔭、阪神でずっと「ええ子」。
text by

広尾晃Kou Hiroo
photograph byToshihiro Kitagawa/AFLO
posted2020/03/28 11:30

2012年夏の甲子園決勝、大阪桐蔭のエースとして君臨した藤浪晋太郎。野球ファン誰もが甲子園で再びその雄姿を待ち望んでいる。
嗅覚の異常を包み隠さず明らかに。
藤浪は発熱やせきなどの症状はなかったが、数日前からトレーナーに「においを感じない」と嗅覚の異常を訴えたという。おそらくはそれが新型コロナウイルス感染の兆候であることを知っていたのだろう。
プロ野球選手のような有名人が新型コロナウイルスに感染したことが明るみに出れば、世間はショックを受ける。中には「気が緩んでいるから感染するんだ」、「この時期に外食するなよ」みたいなバッシングもあるだろう。
それでも、現状ではどこに住んでいる誰だって感染する恐れがある。藤浪を責めるのは全くのお門違いだ。
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それでも古い野球界の体質を考えれば、「隠ぺいしてしまおう」と思うことも考えられた。しかし藤浪は包み隠さず事実を明らかにしたのだ。
私は「やっぱりええ子やなあ」と思った。
世間に対して果たした大きな貢献。
藤浪の感染発覚で、我々は新型コロナウイルスに感染すると「味覚、嗅覚の障害が起こる」ケースがあるという大事なことをいっぺんに理解した。彼は、世間がこの未曽有の災難への知見を深めるうえで、大きな貢献をしたのだ。
幸いにも症状は軽いという。藤浪はこの感染を「災い転じて福」にしてほしい。
今回の新型コロナウイルス禍は、歴史上誰も経験したことのないような未曽有の災厄だ。この災厄の前には、スターも一般人も、どんな国籍、人種もすべてが無力だ。
できることは限られている、何もしないで、出歩かず、じっとしているよりほかはないのだ。
プロ野球、スポーツの再開も、そんなに簡単なことではない。
我々は辛抱強く、粘り強く「スポーツの春」の到来を待たないといけないのだろう。
