リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
アンチフットボールで躍進ヘタフェ。
ボルダラスは恥さらしか名将か?
text by

横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/03/07 11:40

ヘタフェのボルダラス監督(左)は、ELアヤックス戦でテンハーフ監督と揉める場面も。
実はボルダラスはクライフ信奉者。
それでもベルント・シュスターが率いた2006-07シーズンやミカエル・ラウドルップの2007-08シーズン、ミチェルの2009-10シーズンなどは小気味良くパスをつなぐサッカーを実践して、結果も残している。
シュスターは国王杯準優勝、ラウドルップも国王杯準優勝と前述したUEFAカップでのベスト8、ミチェルは当時のクラブ歴代最高位であるリーガ6位を達成した。
つまるところ、いまのヘタフェの特徴は現監督ホセ・ボルダラスの特徴ということだ。
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怪我により20代で現役を引退して監督を始めたボルダラスは、選手だった頃も指揮をとる側にまわった後も、ヨハン・クライフに憧れるクライフ信奉者だという。
なのに、クライフが目指したサッカーには執着せず、経験を積むなかで自身のスタイルを磨きあげてきた。
同じくクライフを信奉するキケ・セティエン(現バルサ監督)は2013年4月、ルーゴを率いてボルダラスのアルコルコンと対戦して敗れた際、次のように嘆いている。
「勝者に値しないチームに負けた。彼らの試合は観るのも嫌だから1部に昇格しないことを祈る。サッカーをしようとしないし、相手にもさせていない。ただ試合を停めては時間を浪費するだけだ」
ヘタフェ会長が招聘を決めた理由。
ボルダラスは2015-16シーズンにはアラベスを2部優勝に導いている。しかし、同時にフェアプレーランキング最下位という不名誉も得ている(イエローカード133枚、レッドカード4枚、イエローカード2枚による退場8回)……。
そんなボルダラスが2016-17シーズン2部第7節終了後、へタフェの監督に就いたのはアンヘル・トーレス会長が強く望んだからだった。
「この世界の賢人たちは口を揃えて、『ボルダラスと契約するな。彼のサッカーはアンチフットボールだ』と警告してきた。だから言ってやったんだ。『私の望みは1部復帰だ』とね」
これは昨年、とあるラジオ番組に出演した際のトーレス会長の言葉である。
果たして、ボルダラスはヘタフェを1部へ戻し、一昨季は余裕をもって残留を決めた。昨季はCLまであと一歩の5位までチームを押し上げ、EL出場権を手に入れた。