「中学校の時からそういうところは」

　レギュラーから急に控えメンバーになれば、誰だって気落ちする。腹立たしさがあって当たり前だし、納得だっていかないだろう。どれだけ自分を落ち着かせて、今の取り組みを大事にしようとしても、心の奥底にネガティブな気持ちが巣食っていたって不思議ではない。

　壁にぶち当たった時にその壁をどのようにとらえ、どのように自分の感情と付き合うのか。

「元々小さい時から上手くいっているサッカー人生じゃないので。中学校の時からそういうところは、鍛えられていると思う。エリートとして来ていない分、1年目も上手く行かなかったけど、我慢できたと思う。我慢できる力っていうのは他の人よりは、強いのかなって思います」

　がむしゃらにだけではなく、辛抱強く自分と向き合い、その中で自分を成長させるためにできることに取り組んでいく。だから我慢の先に成長を実感できる瞬間があり、だからこそまた頑張ろうと思うことができる。そうした経験を積み重ねてきた人は、強い。努力という言葉の中に逃げるのではなく、正しく努力をすることができるのだから。

プラスアルファを出していかないと。

　成長の跡はフレキシブルなプレーぶりからも見てとれる。チームとしての戦い方を確実に理解したうえで、自分の色を付けることが求められるわけだが、その辺りのバランスがとてもよく取れていた。

「守備から攻撃というのはすごく大事にしていて。前半戦もやろうとしていましたけど、全速力でスプリントしてプレッシャー、まず守備から攻撃、そこから速いカウンターというのがハマっている。チームがフレッシュになって、走れているから勝てている。

　フィジカル面で難しい部分はありますけど、チームとしてやることをやらないと試合に出られない。そこにプラスアルファ……自分が持ち味であるボール扱いで奪われなかったり、上手く裏に（パスを）出したりとか、そういうのをプラスアルファで出していかないとダメかなと思います」

【次ページ】　それでもチーム内競争は続く。