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鎌田大地、出場減も気骨のハット。
「他の人よりは我慢できる力が」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/02/28 11:50
ザルツブルク戦後、長谷部誠とともに多くの現地記者に囲まれた鎌田大地。序列を覆し、再びレギュラーの座をつかめるか。
得点以外も素晴らしい活躍ぶり。
そんな強い決意とともに試合に挑んだ鎌田は、これ以上ない形で見事な答えを出してみせた。
4-3-3の右FWの位置で、序盤からどんどんプレーに関与していく。ボールをもらうと相手の激しい当たりをスルリといなし、味方にパスを展開。相手陣内でパスを受ければ、勇敢に何度もチャレンジしていった。
大事な試合で3得点というのは文句なしの結果だが、ゲームメイク、チャンスメイク、ゴールメイクの局面で見事な活躍を見せたことが素晴らしい。守備でも激しく競り合い、相手の前進を再三ブロックしていた。
試合後、GKケビン・トラップは「ファンタスティックだったね。チームにとってものすごく大事な選手なんだ」と称賛していた。自身だけではなく仲間の力を引き出し、それぞれのプレーを見事につなぎ合わせた鎌田の活躍は、チームメイトにとって大切なことだったのだ。
それはヒュッター監督にとっても同様だ。ボール扱いに長け、ゲームの流れを読み、広い視野を持ち、インテリジェンスのあるプレーでアクセントを加えられる。そんな鎌田のプレースタイルを高く評価している。それだけに「我々を勝利へと導いてくれた」と目を細めていた。
「なぜ?」という疑問はあったけど。
「チャンスが来た! 絶対にものにしないと!」と気合を入れただけで、何とかなるわけではない。気負いすぎたら空回りしてしまう。なかなか出場機会が訪れない葛藤の中で、鎌田は何をすべきかを自問自答していた。どうすればいいのか。何をしたらいいのか。そのプロセスがあったからこそ、情熱と冷静を自分の中でうまく配合することができたのではないだろうか。
「あれだけ使われなかったことは僕自身、『なぜ?』って疑問がすごくあった。ただサッカー選手なので、文句だとか愚痴だけじゃなくて、出た時にピッチで表現できないとダメだと思ったので。“そのチャンスがきた時に”っていうのだけを考えながら。昨日の時点でスタメンはわかっていたし、しっかりメンタル面でも……入り込みすぎるのは良くないですけど、本当に集中して、今日に懸けていたので。
ひとつこう……難しい山を越えられたというか。やっぱり海外に来て思うのは、どれだけ良くてもね、時の流れの早さもそうだし、数試合でコロッと(評価が)変わってしまう。僕自身、1年目に来たときはモノにできなかったですけど、今は自分が出たらという自信もある。気持ちの面で、かなり成長できたかなと思います」