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『東京にオリンピックを呼んだ男』
五輪招致で戦後日本に希望を
与えた無私の日系人の生涯。 

text by

後藤正治

後藤正治Masaharu Goto

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posted2020/02/26 07:30

『東京にオリンピックを呼んだ男』五輪招致で戦後日本に希望を与えた無私の日系人の生涯。<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『東京にオリンピックを呼んだ男』高杉良著 角川文庫 1990年『祖国へ、熱き心を』として刊行 2018年改題文庫化 840円+税

 1988年秋のこと。ロサンゼルスに滞在した時期があり、たまたまであるが、日系人のための老人ホームの改築にかかわる集いに出席し、主催者のフレッド・和田勇と会った。白髪の品のいい老紳士であったが、「八百屋の親父ですよ」と自己紹介したと記憶する。

 和田を、1964(昭和39)年東京オリンピックの招致に尽力した一人と耳にしていたが、五輪、八百屋、老人ホーム……がつながったのは、ノンフィクション・ノベルというべき本書を手にしてからである。

 和田は米国生まれの二世だが、少年期、両親の故郷・和歌山の漁村で暮らした。渡米後は野菜・果物の小売業に携わるが、「パールハーバー」が勃発、敵国民となる。日本とアメリカ、共に「敗けてもらいたくなかった」と述懐している。

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