月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
厚底問題もスポーツ紙で理解できた。
元箱根ランナー記者の視点に注目!
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byKyodo News
posted2020/01/31 11:40
世界陸連の指摘により、議論の対象となった厚底シューズ。スポーツ紙ならではの踏み込んだ記事が目に留まった。
元箱根ランナー竹内記者のコラム。
私が注目したのは記事の下にあった報知記者の厚底シューズへの見解である。
・本質的には大きな問題ではない
・現状、スポーツで最も大事な公平性が保たれているからだ
・市民ランナーでも購入可能。履く、履かないは選手自身が判断できる
とし、《走るのは厚底シューズではなく、ランナーであり、ランナーは決められたルールの中で走るだけだ。》
この記事を書いた竹内達朗記者は元日にもコラムを書いていた。
『厚底高速化でも「走るのは僕だ」』(スポーツ報知1月1日)
《シューズの効果があることは確かだが、すべては選手の努力が大前提にある。冬は星が瞬く早朝から走り、夏はうだるような暑さの中を走り、学生ランナーは箱根路にたどりつく。「走るのは僕だ」。》
自身もアスリートのような見解を持つ竹内記者。この名前、覚えがある……。そうだ、昨年夏にこんな「体験記事」を書いていた。
IOCは体験記事を読んでいた?
『男子号砲あと1年 五輪マラソン走ってみた』(スポーツ報知2019年8月10日)
《東京五輪男子マラソンまで、あと1年。学生時代、陸上部に所属していた竹内達朗記者(49)と太田涼記者(28)が閉会式当日に行われる花形種目を最高気温36.0度、今年一番の猛暑の中、体験した。》
猛暑が予想される東京で、マラソンはどんだけハードなんだと言われていた昨年。そのさなか「記者が実際に走ってみました」ときたからこの記事は面白く読んだ。竹内記者は東洋大出身で箱根駅伝に出場経験のある人だった。
で、五輪コースを体験した結果「午前8時頃までなら、辛うじて耐えられる暑さだった。」と報告。
そのあとIOCはマラソンコースを札幌に変更。あれ、もしかしてこの体験記事を読んだの!?
相撲にしろマラソンにしろ、それぞれの分野に記者がいるのは一般紙も同じだが、スポーツ紙の場合はさらに踏み込んでバラエティ豊かに書いてくれるから面白い。まさに餅は餅屋であり、つきたてで様々な味がついたお餅を提供してくれる。
今回の厚底問題も竹内記者のような「専門家」が書き続けてきたのを読むことで私も流れを理解できた(※このあと1月30日のスポーツ紙各紙は「世界陸連、厚底容認へ」という英紙の報道を伝えた)。