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『エベレストには登らない』
極北の原野から日常の気づきまで。
探検家カクハタの真骨頂を見よ!
text by
![森山伸也](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
森山伸也Shinya Moriyama
photograph bySports Graphic Number
posted2020/01/28 15:00
![『エベレストには登らない』極北の原野から日常の気づきまで。探検家カクハタの真骨頂を見よ!<Number Web> photograph by Sports Graphic Number](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/1/5/350/img_156fc93dad07a40244b3b9aa225459fc134971.jpg)
『エベレストには登らない』角幡唯介著 小学館 1400円+税
なんと挑発的なタイトルであろう。世界最高峰エベレスト登頂で名声を得た某アルピニストらに噛みつくふてぶてしさ。登山に馴染みがなく、著者の角幡唯介を知らない人は、こう思うに違いない。
「斜に構えたタイトルだな。本当はエベレストには登れないんだろ?」
いいや、彼の実力ならばエベレストに登れる。しかし、いまやお金さえだせば誰でも挑戦できる頂にはあえて登らないと喧嘩腰に高々という。そう、このタイトルこそが、日本の探検史に残る先鋭的かつ独創的な探検を遂行しつづける探検家カクハタの生きざまを表している。2010年、世界で唯一の空白地帯といわれるチベットのツアンポー峡谷を単独で遡行したルポ『空白の五マイル』(集英社)で華々しいデビューを飾り、コンスタントに作品を発表し続ける43歳。地図を持たずに日本の渓谷を彷徨ったり、38歳でシーカヤックをはじめたりと作品と離れた世界でも彼のバイタリティたるやとめどない。未知の状況におかれた自分は一体どうなってしまうのか? という自我を探る好奇心と、知らない場所を訪れたい地理的探究心に満ち溢れ、その欲求へまっすぐに突き進む男である。
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