Jをめぐる冒険BACK NUMBER
タイ1部監督・石井正忠に聞く、前編。
日本人指導者への期待と現地事情。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNorio Rokukawa
posted2020/01/27 11:30
タイのサムットプラーカーン・シティで指導する石井正忠監督。日本から飛び出し、新たなミッションに挑んでいる。
日本人の考え方に好感、との声。
――サムットプラーカーン・シティの選手たちの技術レベルや個人戦術のレベルは、どう感じていますか?
「日本人選手と比べると、やっぱり差はありますね。個人戦術のところも、もっと上げていかないと難しい。時間は掛かると思うんですけどね。開幕戦で昨シーズンの王者であるチェンライ・ユナイテッドと対戦するんですよ。
相手の監督は滝(雅美)さんで、日本人監督対決として注目されていて。他の開幕戦に先駆けて、我々の試合だけ金曜のナイターなんです。しかも、ホームゲームなので、なんとか結果を出したい。そこまでに、どれだけ持っていけるかだと思っています」
――滝さんはタイでのキャリアも長いですし、昨季のサムットプラーカーン・シティの監督は村山哲也さん(元サンフレッチェ広島強化部スカウトなど)。そして、西野朗さんがタイ代表監督と、日本人指導者への評価や期待が高まっているんでしょうか?
「そう思いますね。私がオファーをいただいたときも、オーナーがそうした話をしていました。日本サッカー界から学びたいというだけでなく、オーナーはビジネスで日本人と仕事をしたことがあるそうで、そのとき、日本人の働き方や考え方に好感を覚えたと。だから、自分のクラブチームも日本人に任せたくて、村山さんや私に声を掛けたんだと思います」
――西野さんと会う機会はあったんですか?
「いえ、まだないですね。加藤くんがお父さん(元日本代表GKの加藤好男さん)の関係でよく知っているそうなので、今度会わせていただこうかなって(笑)」
日本語が書かれたクラブハウス。
――それにしても、こんな郊外にあるのに、施設がしっかりしていて驚きました。このクラブハウスの隣にあるのは宿泊施設ですか?
「そうなんです。最初は私も、ここで暮らそうかと思ったくらいで(笑)。クラブハウスの各扉にも、『マッサージルーム』とか『ロッカールーム』とか、日本語で書かれていて。日本のチームがこの施設で合宿を張れるように、というオーナーの考えだそうです」
――オーナーの方は石井さんにどんなミッションを与えたんですか? タイ王者にしてほしいとか?
「いや、順位をひとつでも上げてほしいと。タイリーグには強いチームが5つある。その5強に食い込んでいきたい、という話をされました。チャンピオンになるとか、ACLに出るといった話は一切なかった。逆に、私のほうから『ぜひチャンピオンを目指しましょう。ACLに出場し、日本のチームと対戦したいです』と話したくらいで」