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J2からJ1への“個人昇格”が急増。
全ポジションリストと流行の理由。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byJ.LEAGUE

posted2020/01/17 11:50

J2からJ1への“個人昇格”が急増。全ポジションリストと流行の理由。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

J2得点王のレオナルドの移籍にはかなり注目が集まったが、かなり早い段階で浦和への移籍が決定した。

昇格した横浜FCが連れていく選手。

 サイドバックでは志知孝明の横浜FC入りが目を引く。

 '15年に特別指定選手として加入した松本山雅FCではほぼノーチャンスの存在だったが、昨シーズンの水戸ホーリーホック移籍がキャリアの転機となった。本来のサイドハーフではなく左サイドバックのポジションを与えられ、J2で指折りの左サイドバックとの評価を受けた。

 J1の鹿島アントラーズも興味を示したといわれる26歳は、横浜FCでもスタメンに食い込む力がある。左利きの左サイドバックは、世界的にも価値がある存在だ。

 左サイドバックでは、香川勇気も大分トリニータ入りしている。'18年はシーズン途中から東京ヴェルディで、'19年は所属元の長崎で出場機会を得ていた。攻撃力を持ち味としており、3バックでも4バックでもプレーできる汎用性もある。

 GKには個人昇格ではなく“個人残留”となった選手がいる。守田達弥だ。

 '19年に在籍した松本山雅FCは、残念ながらJ2に降格してしまった。しかし、劣勢の試合が続くなかで守備を支えた彼は、サガン鳥栖の一員として'20年もJ1のピッチに立つ。

過去の成功例が流れを加速する。

 J1より試合数の多いJ2では、どのチームの選手もタフさが求められる。J1なら全日程終了となる34節以降の戦いこそが、最終的な順位を決するからだ。フィジカルはもちろんメンタルも逞しくなければ、チームの勝利に貢献できない。

 同時に、J1に比べて傑出した「個」が少ないリーグで目標を達成する手段として、監督たちは戦術的なオプションを活用する傾向にある。その結果としてハードワークを土台としながら複数のシステムに対応できる選手が、増えてきていると言うことができるだろう。

 J2から個人昇格を果たした選手の成功例も、J2リーグそのものへの評価を高めている。元日の天皇杯決勝でヴィッセル神戸の初優勝を後押ししたCB大崎玲央とFW古橋亨梧は、徳島と岐阜から神戸に加入している。昨シーズン途中に大分から引き抜かれた藤本憲明も、JFL、J3、J2、J1と階段を登ってきた叩き上げだ。

 森保一監督のもとで日本代表に招集されている畠中(F・マリノス)、DF安西幸輝(ポルティモネンセ)、MF三竿健斗(鹿島アントラーズ)らも、J2でプロデビューを果たしている。奇しくも3人は、東京ヴェルディのアカデミーからトップチームへ昇格した選手たちだ。

 J1のレベルに到達していない選手が、J1各クラブのチーム事情で戦いのステージを上げているのではない。J2で鍛えられた才能がJ1で揉まれ、J1の競争力を高めていくのが、スタンダードとなっているのである。

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