「箱根から世界へ」の筆頭格。

　水があふれそうなコップに1滴、また1滴。もう無理だ。これ以上は――。それでも、もう1滴。縁からこぼれるか、こぼれないかの瀬戸際の時間ほど、ランナーにとって苦しいものはない。そこに挑み、超えること。それが鉄紺のエースの宿命であり、日の丸を背負って世界と戦うための条件となる。

　酒井監督も「過度な期待をかけたくはないけど……」としながらも、求めるレベルの高さを語った。

「他大学を見ても、世界を意識して箱根駅伝に臨むと宣言しているのは現時点では彼かな、と思っています。だから、世界を目指すなら、こういう走りをしなくちゃいけないんだという思いを、箱根で表現してほしい。

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　今回は4年生の集大成というだけでなくて、五輪に挑むということも掲げて臨む。『箱根から世界へ』という言葉を体現できるようなスピリッツを、苦しいところでは出してほしい」

2番も、3番もいらない。

　往路3連覇、そして6年ぶりの王座奪還を虎視眈々と見据えるチームを上から引っ張るのが相澤なら、下から支える存在も忘れてはならない。

　定方駿は最終学年にしてブレイク。関東インカレハーフマラソンで6位入賞を果たすと、出雲駅伝で3大駅伝デビュー。6区3位と好走し、勢いそのままに全日本でも7区2位と他大学のエース級と渡り合える力量を示した。
　
　父・次男さん、そして兄・俊樹（現・MHPS）も鉄紺をまとって箱根路を駆けただけに「2人はあこがれの存在。ずっと活躍する姿を見てきたので、自分も同じ舞台に立ちたい」と意気込む。

　宮下隼人や蝦夷森章太（ともに2年）ら下級生も台頭。渡辺奏太の復活、今西駿介（ともに4年）もレベルアップした姿を見せるなど好材料は多い。

　連覇を目指す東海大をはじめとする「5強」を軸に展開されそうな令和最初の箱根駅伝。もう、2番も、3番もいらない。てっぺんで輝くのは、大エースを擁する鉄紺だ。