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東洋大・相澤晃の「もう1滴」の走り。
モグスの不滅の区間記録も視野に。
posted2019/12/17 18:00
text by
太田涼(スポーツ報知)Ryo Ota
photograph by
Nanae Suzuki
言うは易く行うは難し。「攻めの走り」と多くのランナーが、監督が、口にする。だが、鉄紺の「攻める」は、他大学のそれとは違った重みを持つ。
東洋大のエース・相澤晃。誰もがその実力を認める学生長距離界の星も、自信だけを心の内に秘めて走り続けてきたわけではなかった。
「学法石川高時代は、不安しかなかった。今も、不安との戦い。あの時に憧れていた東洋大の先輩たちのようになれているのかな、という思いもあります」
それだけ強烈な光を放つ男たちが、11年連続3位以内という驚異的な東洋大の歴史を築いてきた。
2代目・山の神、柏原竜二。設楽啓太・悠太ツインズ。服部勇馬と弾馬兄弟。果たして、彼らに肩を並べられるほどの実力があるのか――。
「あいつには勝てない」という走り。
相澤自身が羨望の眼差しを送ってきたレジェンドたちの強さと速さ。共通するのは、数字以上に、一度見たら忘れることのない激走の数々だ。目を閉じれば、彼らの息づかいが、苦しさにゆがむ表情が、腕を振り死力を尽くして走る姿が今も浮かぶ。
「記録はもちろんですけど、記憶に残る走りがしたい。見ている人の気持ちを熱くさせるような姿を見せたいです」
相澤が目指すものも、そこにあった。実際、今季は出雲3区、全日本3区と連続で区間新をマーク。特に伊勢路で印象的なシーンが見られた。
「『あいつには勝てない』という走りが必要だった。相手をあきらめさせるような」と序盤からハイペースで飛ばす相澤に、9km付近で酒井俊幸監督が「休まない! 休まない!」と猛ゲキ。突っ込んで、維持して、スパート。自分の限界に挑む姿こそ、攻めの走りの真髄。最後の箱根路で体現するのは、そんな走りだ。
「2区なら塩尻(和也、順大)さんの日本人最高ではなく、モグスさん(山梨学院大)の区間記録にどれだけ近づけるか。4区なら前回より30秒~1分くらいは更新できる自信があるので、20年以上抜かれないような記録を打ち立てたい。箱根を通過点、ステップにして、まずは2020年の東京オリンピックに1万mで出場するというのはもちろんですし、その先につながるシーズンにしていければなと」