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イチロー、ついに草野球デビュー!
ガチ投球で完封劇の先にある夢構想。 

text by

笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/12/03 19:00

イチロー、ついに草野球デビュー!ガチ投球で完封劇の先にある夢構想。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

KOBE CHIBENの投手として先発したイチロー。131球を投げ6安打を許したものの、16奪三振の完封で14−0の勝利を飾った。

「もう一度、純粋に楽しい野球がしたい」

 今回の草野球回帰。それは前にも触れたが、現役引退時の言葉に遡る。

「もう一度、純粋に楽しい野球がしたい」

 あらためて真意を記す。

「プロの世界でここまでやって来ると純粋に楽しい、子どもみたいに楽しめるかと言えば、それは責任を伴うんで出来なくなる。ある程度プロの世界でやった人間、時間をかけて結果を残してきた人間はみんなじゃないと思うけど、そこに戻りたいという人は結構いると思うんです」

 深い言葉に感じた。

極めるほどに責任が増えていった。

 プロ野球選手になることを夢見ていたイチローさんはその世界に入ることを許され、その中で一軍にたどり着き、レギュラーの座を奪い、日本一の打者として実績を残した。

 そこから先のMLBでの挑戦では、長いメジャーの歴史の中で誰もたどり着けなかった入団から10年連続200安打を放ち、シーズン歴代最多安打を262安打と更新し、10年連続ゴールドグラブ賞に加え球宴出場も果たした。新人王、MVPにも輝き、まさに成功の体現者と評価された。

 だが、本人の中では大好きな野球が次第に楽しいだけのものではなくなっていったと言う。プロとしての使命、責任に追われ、いつしか野球は自分のためだけのものではなくなってしまった。

 大好きなものを職業にできる人間ほど、世間で幸せな者はいない。ましてや、その世界で頂点に立つとなればなおさらだ。だが、だからこそ、極めれば極めるほどに責任が増え、追われ続けることになる。

【次ページ】 田中将大や工藤公康もイチローの夢に賛同。

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