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クリソベリルが無傷の6連勝で戴冠。
チャンピオンズカップ直線の大迫力。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2019/12/02 11:50
クリソベリルと川田将雅が砂の王者を戴冠した。これでデビュー6連勝。この馬のスケールは計り知れない。
名手と駿馬3組の叩き合い。
ラスト200m。インティが完全に抜け出した。直後のクリソベリルは置かれ気味になった。が、外のロンドンタウンが下がり、前のインティが伸びたことにより、クリソベリルの右前方に進路がひらけた。
川田は右ステッキを入れながら、クリソベリルを外(右)へと持ち出した。普通なら鞭を持ち替えて左ステッキを入れるところだが、どうやって進路を変えたのかと不思議になるほどスムーズにインティの外に出た。
ちょうどそのとき、外からゴールドドリームが凄まじい脚で伸びてきた。クリソベリルを一気にかわしそうな勢いだ。しかし、クリソベリルは、かわされるどころか、ゴールドドリームの勢いに乗じるかのように末脚を伸ばす。
内が武豊のインティ、真ん中が川田将雅のクリソベリル、外がクリストフ・ルメールのゴールドドリーム。3人の名手が操る3頭の駿馬による壮絶な叩き合いとなった。
「両サイドが素晴らしい馬だった。前に出るのは難しいかと思いましたが、3頭で併せ馬をする形から、自分でしっかり伸びてくれました」
そう話した川田は全身を使ってクリソベリルを追った。クリソベリルは力強くストライドを伸ばし、ゴールドドリームを首差抑え、先頭でゴールを駆け抜けた。勝ちタイムは、従来の記録を1秒6も更新する1分48秒5のレースレコード。
馬の強さと、川田の進路確保。
これでデビュー以来無敗の6戦6勝。前身のジャパンカップダート時代の2001年クロフネ、2005年カネヒキリ、2006年アロンダイト、昨年のルヴァンスレーヴにつづくレース史上5頭目の3歳馬による制覇となった。
6戦無敗での古馬GI制覇は2002年のエリザベス女王杯を勝ったファインモーション以来史上2頭目。無敗でのJRAダートGI制覇は史上初の快挙だ。
何より、馬が強かったのだが、 行き場がなくなりかけたところで、インティの強さを利用して進路を確保した、川田の冷静な手綱さばきが光った。