今の自分に満足しているわけではない。

　中村はジュビロ磐田から7月11日に横浜FCに移籍してきた。

　目標であるJ1昇格を達成し、ボランチというポジションでレギュラーを獲り、チームに貢献した。苦しんだ時期もあったが、やればピッチで輝けることを証明した。今、横浜FCへの移籍を振り返り、中村はそれをどう判断しているのだろうか。

「（自分を）よくするために移籍するし、マリノスを出た時もジュビロに行った時も悔いはない。今回の移籍もそう。

　今は、これが自分の理想ではないけど、自分の能力がなければこうして（ボランチでの役割を果たして）試合に出るしかない。それは自分で認めて、やることはやるけど（理想は）諦めたくはない。ずっとリケルメみたいなザ・10番でやっていても良かったのかなと思うところもある」

自らの理想とは異なるサッカーでも。

　磐田時代も「俺の考えは間違っていない。もっとこういうサッカーをした方がいい」というのをずっと抱えながらサッカーをしていた。その思いの強さを実現するだけの技術と経験を持っているのが中村だった。

　ただ、監督の考えるサッカーを実現しないと試合には出られないことを中村は横浜FCで改めて突き付けられた。

　技術があり、能力があるけど出られない。ある意味プライドをへし折られた感覚もあっただろうが、それでも最後は下平監督の信頼する選手になった。そうした経験は、中村にとって選手としても指導者など今後の自分にとっても意味のあるものになった。

　来年も横浜FCは、おそらく下平監督のサッカーを継続していくことになる。

　中村は「半年契約なんで、いるかどうかわからない」と語った。

　J1昇格を請負い、その責務を果たし、選手としての懐の深さを増した中村が次、どんな挑戦をするのか。どういう選択をするにせよ、またピッチで年齢を凌駕したプレーを見せてくれるはずだ。