ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ボルシアMGの凄そうで不思議な異名、
「攻撃サッカーの殿堂」復活のワケ。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/11/23 08:00
かつて大津祐樹も所属したこともあるボルシアMG。今季ブンデスを席巻する存在だ。
大迫のマッチアップすら起きない?
さて、ローゼ率いるメングラは一体どんなサッカーを観せてくれるのでしょうか。
固唾を呑んで見守ろうと思った瞬間、僕が座る記者席の隣にプラスチック製のビールカップを持った赤ら顔のオジサンがどっかと座り込んで喚声を上げるではありませんか。「おい! 試合が始まるぞ! すげーな、おい!」と言って僕の頭をペシペシと叩いたかと思ったら、どこかへ行ってしまいました。
ふう、少し落ち着こう。
ブレーメンの1トップ・大迫に対してメングラ守備陣がどんな対応をするのかと思ったのですが、そもそも大迫とCBギンターのマッチアップすら生まれません。メングラの前線プレスは凄まじく、相手がボール保持した瞬間4、5人で一斉に取り囲んで刈り取り、一気に敵陣へ殺到します。
まさしく「8秒ルール」。その中心軸には常にボランチのザカリアがいて、彼のポジション取りに呼応するようにチーム全体がパッケージングされるが如く伸縮しています。
先発の新戦力はテュラムの息子くらい。
特筆すべきはメングラのスタメンで、今季新戦力はFWマルクス・テュラム(←ギャンガン/フランス・父は元フランス代表のリリアン・テュラム)とSBラミ・ベンセバイニ(←レンヌ/フランス)のふたりしかいないのです。
その他の9人は昨季もメングラに所属していたのですが、彼らのプレー傾向は完全に“ローゼ色”に染まっています。短期間でこれだけのチーム戦術を築き上げたばかりか、その高い実効性で相手を凌駕する様に感嘆してしまいます。
と、思ったらMFラスロー・ベネスの右FKからラミ・ベンゼバイニがヘディングを流し込み先制。するとさっきのオジサンがまた横に座って高らかにチャントを奏で始めました。
続いて22分、テュラムと相手GKイリ・パブレンカが交錯した隙を突きMFパトリック・ヘアマンがシュートを流し込んで2点目を奪取。倒れ込んだテュラムに仲間が駆け寄り「痛くない、痛くない」とテュラムの頭をさする姿にチームの団結心を感じちゃいました。あっ、またオジサンがこっちに来た。
27分、ブレーメンの大迫が強烈なシュートを突き刺したと思われましたが、VARの末に直前の味方MFミロト・ラシカのファウルが認定されてノーゴールに……。オジサンが僕の背中をバンバン叩いて「良かったなぁ、おい!」と言っていますが、我らが日本代表のゴールが取り消されたんですから、ちっとも良くないです。