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首骨折でもIWGPジュニアを守った男。
ファンが待ちわびた高橋ヒロムの帰還。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2019/11/06 19:00
深刻な頚椎の怪我を負ったはずの選手が……怪我を完治させ、見事な首ブリッジを披露した高橋ヒロム
約1年4カ月、姿を消したヒロム。
ヒロムが、首に負傷したのは、2018年7月7日のサンフランシスコ大会だった。カウパレスで行われたIWGPジュニアヘビー級選手権2度目の防衛戦、ヒロムはドラゴン・リーの投げで首に重度のダメージを負ってしまった。試合には勝利したものの、それから約1年4カ月、ファンの前から姿を消していた。
そのヒロムが大阪に姿を現した。
「1つだけ大事なことを言う。ウィル・オスプレイ、東京ドームでIWGPジュニアのベルトをいただく。タイムボムだけじゃないから」
勢いでそう言ったヒロムだが、よく考えてみると、身体的にオスプレイを、上まわるものがないのに気づいた。
「ドラゴン・リーとやって首をギェーってやった時も、あきらめが悪かった。このあきらめの悪さが、オレの取柄かもしれない。オレもキズついたけれども、彼も心にキズを負っただろう。もういいじゃないか、早く新日本のリングに戻って来いよ」
「オマエが知っている以前のオレとは違う」
これにオスプレイが返した。
「サプライズは好きじゃないんだ。でもね、これはうれしいサプライズだった。オレが聞いていた話では、彼はまだあと1年は戻って来ないだろう、ということだった。だけど、彼は戻って来て、オレに挑戦してきた。彼はオレからベルトを奪ったことがある。そして、タイトルマッチで首が折れても防衛して見せた。うれしいよ。本当にうれしいよ。オレも望んでいたものだ。レッスルキングダム以上のステージはない。
だけどな、ヒロム。オマエが知っている以前のオレとは違うんだ。オマエが休んでいる間、オレは新日本のジュニアを背負ってきたんだ。挑戦者全員を倒してベルトを守って来た。ここはオレが完全に支配した。リングを走り回ってコーナーに身を打ち付けただけで勝てると思うのか。悪いが、東京ドームの後、オマエはまたケガで休むことになる。友よ、すまない。でも、オレはそうするしかないんだ」