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W杯、五輪後のブラジルサッカー界。
ベテランが続々帰国した理由とは? 

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エリック・フロジオ

エリック・フロジオEric Frosio

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posted2019/10/15 08:00

W杯、五輪後のブラジルサッカー界。ベテランが続々帰国した理由とは?<Number Web> photograph by Facebook Sao Paulo FC

ブラジルを離れてから17年。世界的に有名なブラジル人のヒーロー、ダニエウ・アウベスはサンパウロFCでのプレーを選んだ。

他にも欧州から移籍してきた者達が……。

 ロドリゴをレアル・マドリーに売却しながら財政的な困難から抜け出せずにいるサントスは、それでも、前アルゼンチン代表監督ホルヘ・サンパオリの招聘に成功した。サントスの名は、今も特別な響きを持っていたのだろう。彼はサントスで、ブラジルで最も優れたサッカーを具現化した。そしてポルトガル人ジョルジェ・ジェズス率いるフラメンゴとの首位攻防戦で死闘を演じたのだった。

 フラメンゴを率いるジェズスもまたブラジルに惹かれたひとりだった。

 ニューカッスルとは契約締結寸前までいきながら、彼が選んだのはドミンゴス・ダギア(オーバーヘッドキックの創始者と言われる)やレオニダス・ダシルバ(1938年ワールドカップ得点王)ら数々の伝説の名手を輩出したリオの名門クラブだった。

 3500万人のサポーターを有し、ブラジル最高の人気を誇るフラメンゴは、バイエルンとの契約が切れたラフィーニャ(34歳)と、アトレティコ・マドリーとの契約が終了したフィリペ・ルイス(34歳)を獲得したばかりか、デポルティーボ・ラ・コルーニャからは26歳のスペイン人DFパブロ・マリを獲得したのだった。

 ちなみにスペインからは、アトレティコ・マドリーなどで活躍したフアンフラン(34歳)も今季からサンパウロFCに加わっている。

不況の拡大と治安の悪化が連動。

 こうしたベテラン勢の帰還で、ブラジルのクラブが獲得した選手の平均年齢が一挙に上がった印象を受ける。だがそれも、「サポーターやメディアにとってはいいことだ」と、テレビのコメンテーターを務めるセルジオ・デュボカージは言い切る。

「テレビの視聴率にも観客動員にも大きな刺激になるだろう。他のクラブも同じように金をかける気になる。それこそが必要なことなんだ!」

 とはいえ不況が拡大し、治安がどんどん悪化している状況では、著名な選手たちの関心を誘うのは簡単ではない。

 2009年から'14年にかけてはまだ良かった。ブラジル経済はいまだ活況を呈し、自国開催のワールドカップへの期待感からロナウドやロナウジーニョ、アドリアーノ、ジュニーニョ・ペルナンブカーノ、ロビーニョといった大物たちが帰国を果たし、ネイマールのような若手も母国に留まっていた。

【次ページ】 クラブの経営危機が深刻に……。

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