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内田篤人が川崎に敗れて話したこと。
「俺はまだ31歳だから。31だよ」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/10/10 17:00
内田篤人が鹿島で担っているものは大きい。それだけに本人の悔しさも大きいのだろう。
負けも勝ちも引きずらない。
8月10日から始まった公式戦不敗記録は、13試合でこの日止まった。
「そうだね。帽子変えなくちゃね、ジンクスは終わり」
試合後、ミックスゾーンに姿を見せる内田はいつも黒いキャップ帽をかぶっているのだが、それは負けないジンクスだったようだ。
「鹿島は負けに馴れているチームではないけれど、切り替えという部分では下手じゃないと思う。若い選手が多いぶん、練習をしっかりやれれば。こういうひとつの負けで、このままズルズルとJリーグにも響くのか、次の試合に勝ってルヴァンカップ決勝へ行けるのか、負けて終わるのか、今はどうなるか知らないけれど、負けを引きずることはない。変な話、勝ちも引きずってないからね、俺らは。
俺自身は48時間はとりあえず休んで、今日の疲労をとって、コンディションを戻す……って90分出ていないから、別にね。みんなすごく俺のコンディションのことを心配してくれるけど、俺はまだ31歳だから。31だよ。亮太とか(遠藤)康とか、(伊藤)翔と変わらないから。もっとこき使ってくれていいんだよ。そうやって身体は、耐久ができるようになってくるから。まあ、そこは練習での自分の意識次第だとは思っているけど」
「みんな好きなんだねぇサッカーが」
試合後は、川崎の中村憲剛のもとへ挨拶に出向き、「憲剛さんより長くやりたい」と伝えた。しかし中村が39歳で、三浦知良は52歳だと記者に指摘されると何度も「すごいよねぇ。あと8年も厳しいよ。みんな好きなんだねぇサッカーが」と笑う。
ミックスゾーンで記者に声をかけられると、どんな試合のあとでも、試合に出ていなくても、内田は足を止める。
そこで彼が話す言葉にウソはない。しかし、そこで口にした言葉が彼の想いすべてではない。感情をそのままストレートに吐露するようなことは、意外と少ないかもしれない。
この日も、自分が途中でピッチを去り、その後2失点。その現実に対する悔しさや落胆、もろもろの感情を押し殺し、いつもと変わらないテンションで明るく振る舞っているようだった。それでも想いがこぼれる。
「憲剛さんも(小林)悠も出ていないのに、3失点というのは悔やまれる。彼らを引きずり出す展開にできなかった。川崎の監督が考えるベストの11人にその2人が入っているか俺にはわからないけれど、やっぱり俺の知っている憲剛さんはレベルが違うから」