イチ流に触れてBACK NUMBER
将来的には全国リーグを作りたい。
イチローが草野球にガチで挑む理由。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2019/09/27 11:30
9月14日、シアトルでマリナーズの特別功労賞「フランチャイズ・アチームメント賞」を受賞したイチローさん。
超一流選手にしかわからない世界。
イチローさんの先の言葉に話を戻すが、発言の真意は“高額年俸をもらうということはそれに見合った成績を残さなければならない。それを受け入れる自信がすごい”ということになる。
イチローさんの最高年俸は'09年から'11年にかけての1800万ドル(約19億2600万円)だった。当時は「1番打者」としては破格の年俸と言われたが、この金額を受け入れるために彼がどれほどの責任と重圧を背負ってきたことか。その中で彼はシーズン200安打を継続していったのである。この領域は超一流選手にしかわからない世界だろうが、だからこそイチローさんは今、草野球がしたいのだと感じる。
「プロの世界でここまでやって来ると純粋に楽しい、子どもみたいに楽しめるかと言えば、それは責任を伴うので出来なくなる。だから、そういうものがなくなって、もう一度純粋に楽しい野球がしたい。ある程度プロの世界でやった人間、時間をかけて結果を残してきた人間はみんなじゃないと思うけど、そこに戻りたいという人は結構いると思うんです」
イチローが草野球に原点回帰する理由。
プロとして、背負い続けてきた野球でなく、自らが心から楽しめる野球。メジャーで3089本もの安打を放ち、野球殿堂入り確実にしたイチローさんが草野球に原点回帰する理由はここにある。
そのイチローさんには夢がある。
「僕は草野球でもしょうもないグランドではやりたくないので。だからリーグを作りたいなと思うんですよね、将来的に。そうしたら僕らは神戸(地区予選)で。全国から集まったチームが神戸で決勝戦をやる。草野球だって立派な野球なんで。その人口が増えるというのは野球界にとってマイナスではないと思う。そこに子どもたちを連れてきてもいいし、そこで僕のプレーを見られたらということもあるじゃないですか。いろんな可能性があると思うんですよね」
野球界への貢献、恩返しは指導者としてプロのユニフォームを着ることだけではない。構想ではあるものの、自らのポリシーとスタンスを貫こうとする姿が実にイチローさんらしいと感じた。
次回はデビュー戦の相手に決まった「和歌山智弁」との出会いと彼らへのイチローさんの思いをお届けしたい。
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